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Aさんから悲しい匂いがする時は、彼女はきょうだいの話をしている時。
でも、悲しい匂いだけじゃない。いろんな感情が混じっている。
複雑な匂い。

また今日も夜になった。Aさんが扉を開ける音がする。
俺は起き上がって、Aさんを呼んだ。

「炭治郎くん」

Aさんは狐面をつけ、黒髪を結んだ。
Aさんの黒髪が月の光に照らされている。

「早く寝なさい。若い子は寝て大きくなるんだから」

「Aさんも若いです」

「ははっ私なんてもう成長しないよ」

Aさんは振り返って、森に入ろうとしていた。

「待ってください!」

俺が声をあげると、Aさんはピタリと止まった。

「あ、あの」

「静かに。夜に大声をあげると鬼が来る」

「すみ、すみません」

「……まだ、平気かな」

外に少し出たところで俺はAさんに追いついた。
身長、少しAさんが高いだけだ。すぐに俺も成長するだろうか。

「ごめんなさい、引き止めて」

「いいや、いいよ。まだ鬼も見えないし」

「こ、こんなに暗いのに見えるんですか?」

外は暗い。月光があってもよくは見えない。

「目がいいんだよ私。いろいろ見えるんだ」

そうだったのか。

「やれば感情も見える。疲れるからやらないけどね」

Aさんは意地悪そうに言った。

「炭治郎くんはどうしたの?こんな夜にさ」

「……えっと、……」

「用がないならちゃんと寝なさいな。明日つらくなるよ」

また、Aさんが頭を撫でる。
手が温かい。

「……あの、Aさんの……兄妹について、……知りたくて」

Aさんが手を止めた。
俺が顔を上げるのと同時に、Aさんの鉄扇が首元に当たった。
冷たい、冷たい鉄の扇。凍るような感覚が背中を走る。

「!」

「寝なさい」

「あ、あの」

「寝なさい」

「Aさん、」

「……」

まただ。複雑な匂い。

「……おれは、Aさんの、ことを知りたくて」

「君には関係ない」

鉄扇に込める力が強くなる。

「君には……関係ないんだよ。炭治郎くん」

いつも見慣れた狐面が怖く感じる。
冷たい視線を俺に向けている。

「…………私の家族のことは……」

「……」

「今は話したくない……」

声が震えている。

「……でもね」

俺の首から鉄扇が離れ、Aさんは森の方を向いた。

「私が炭治郎くんのこと頼れる人って思えたら」

Aさんは面をずらして森に歩いて行った。

「話さないこともない」

そうして彼女は森に消えた。

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花帆 - 年上夢主さんに甘えてしまう炭治郎本当に可愛い(大好物)ので読めて嬉しいです! わぁ、また書かれた際はぜ拝読できるのを楽しみにしておりますね(*´ω`*)  (2019年9月2日 19時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
五十土(プロフ) - 花帆さん» コメントありがとうございます!お兄ちゃん炭治郎が年上相手にどうするのか書いてみたかったので、好きになっていただけてよかったです^ ^続編もできたら書いてみようと思います。応援ありがとうございます( *`ω´) (2019年9月2日 17時) (レス) id: a2d3564c6a (このIDを非表示/違反報告)
五十土(プロフ) - 鈴香さん» コメントありがとうございます!時間ができたら頑張ってみます!応援ありがとうございます(`・ω・´) (2019年9月2日 17時) (レス) id: a2d3564c6a (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 一気に読ませて頂きました!年上に恋する炭治郎めっちゃ良かったです(*´ω`*) 可愛い…鬼殺隊に入ってからの炭治郎めっちゃカッコ良くなりますし、両想いになるまでやなった後もすごく見てみたいです…!続編も読めると嬉しいです(o>ω<o)受験ファイトです! (2019年9月1日 12時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
鈴香(プロフ) - この作品すごく好きです!!続編や番外編!楽しみにしてますね!受験頑張ってください!(*´ω`*) (2019年8月6日 15時) (レス) id: 433bf9ff90 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:五十土 | 作成日時:2019年4月30日 1時

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