炭酸水 -泡泡- (ページ38)

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｢うん、｣

t｢この前のこと。｣

そこまで言って口に水を含む仕草を見せてから

t｢俺の中で答え出せたから今日伝えたいなと思って｣

｢…そっか｣

少し口角を上げて私に言った。

………遂に来たんだ。

近々かなとは予期していたけど、、
まさか今日とは。

心構えというか、心の準備というか。

そんな名の鎧を装着する時間がなくて、丸腰で聞くっていう状況にひとりでに焦る。

バレないように取り繕うと必死になるけど、身体は急に強ばって力が篭もるし、心臓はドッキドキドッキドキ煩いくらい脈を打ってる。

そんな私に気付いてか全く気付いてないからかは分からないけど、私をちょっと見つめた後に手を伸ばしてきて。

スローモーションのように近づいて来るその手に、もっと、より心拍数が増加し続ける状況になって一気に体温が上昇していく。

…のに、

｢っ、｣

机の向かい側から伸びてきた手が、私の手に触れた瞬間

…？
何かモヤッとした、しこりのようなものを感じて。

戸惑っていると、力んでいた身体からどんどん力が抜けていくのを感じた。

…少し前まで抱いていた、いや、

今もずっとそうだって疑わなかった、

裕ちゃんにされることは何でもドキドキする

っていう、“方程式”みたいなものが当てはまらなくて、バラバラ音を立てて崩れていくのが聞こえる気がする。

どうして…？

そんな私と目が合った時

彼は何故か薄く笑った。

そして言った。

t｢俺、本当にAが好きだよ。｣

こっちが切なくなるくらいの甘い声で。

t｢…Aが、俺の我儘聞いてくれて嬉しかった、ありがとう。

いつの間にか大人になってたAの生活にちょっと入れて嬉しかった。｣

t｢本当に、本当にAが好き。｣

なんだろう、この感じ。

彼から伝わってくる胸がギュッてなって目を逸らしたくなるような雰囲気は。

好きっていう言葉を発する度に香る、甘くて甘い目の裏に
Aって言葉を発する度に見える、切なくて寂しい香り

そんな物が存在するような気がするこの雰囲気は。

t｢だけど、ごめん。｣

ほら、逆説が聞こえた時にも感じる。

t｢何回も考えたけど、Aは妹｣

その雰囲気はズキズキ刺さってきて、振られたっていう大きいショックになるはずのものに小さく違和感が消えそうに紛れている。

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