◎:溶けるリップ ページ5
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「まだ?」
「もうちょっと」
久々のデートだからって、場所決めて待ち合わせしよって約束したのに朝になったら当たり前に紫耀が家に来た。それも待ち合わせの2時間前。理由を聞けば「準備してる時間が勿体ない」らしい。私たちにはこのくらいが丁度いいのかも。
「ねーネイル変えたの?」
「あーうん」
「いつ?」
「昨日」
「は?聞いてないよ」
「言ってないもん」
「は?」
「でも気付いてくれた」
「当たり前じゃん」
ちょっとしたことで言い合いになることなんてもう慣れた。でも、ちょっとした変化にも必ず一番に気付いてくれるから嬉しいんだよね。
「おれのすきないろ」
「それはよかった」
「くっちゃいたい」
「やめて」
私の右手の指一本一本を丁寧に触りながら全部ひらがなで聞こえる紫耀の眠たそうなこの声が落ち着く。そのままテーブルの上に置いてある紫耀とお揃いのリングを手に取って右手の薬指にはめる。
「ねーなんでいつも外してんの」
「髪の毛引っかかるんだもん」
「俺は毎日付けてんのに」
「撮影中は外してるでしょ」
「そうだけど」
痛いところ突かれて一瞬目を逸らすのは紫耀のクセ。分かりやすく不貞腐れたかと思えば、じっとこちらを見つめる紫耀。せっかく塗った新作の深紅のリップが溶けるまであと数秒。
サン、ニ、イチ。
紫耀の親指が私の唇に触れる。
「なんかいつもと違う」
「似合ってる?」
「うん、むかつく」
そう言いながら私の後頭部を押さえてキスをする。
自然と絡まる指が離れてくれない。
もう間に合わない、待ち合わせの時間まであと10分。
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まきこ(プロフ) - 全部のお話すごく好きです!!甘えてくれる紫耀くん可愛すぎますね!またいろんなお話読めるの楽しみにしてます^ ^ (2021年2月14日 8時) (レス) id: cfbbd37a93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:詠夢 | 作成日時:2021年2月7日 1時