【wrwrd】突然の思いつきによる初心者の短編集。 (ページ1)

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記念日の贈り物　kn ページ1

俺の彼女は所謂形から入るタイプ、というやつで、
絵を描くときフルデジタルのくせに手元に羽ペンを用意したりとか、近視でも何でもないのに本や新聞を読むとき眼鏡をかけたり。

そんなことを非常に好んだ彼女が
“出会って○ヶ月記念日”という名のプレゼント渡しを始めても何らおかしな話ではない。

元々こんな事を喜び祝うリア充を嫌っていた彼女は付き合ったや否や「やっぱり恋人っぽいことがしたい」とニコニコしながら俺にプレゼントを渡すようになった。

最初は受け取るだけだった俺も次第にAに悪いかもしれない、なんて考えてしまって。

毎月毎月、お互いに飽きもせず同じようなものを贈り合うようになっていた。

そして今日、出会って36ヶ月記念日。言ってしまえば3年だ。
そんなに長い付き合いやっけ、なんて言いながら彼女に空色のピアスを差し出すと、彼女はパッと花が咲くような笑みを浮かべて。

“ありがとう”

そう言って、俺の両手に丁度収まるくらいの大きさの箱を取り出した。

可愛らしい彼女が可愛らしいラッピングをされた箱を持っている、というのは当然ながら可愛らしくて、自然に頬が緩んだ。

そんな“恋人らしい”雰囲気をぶち壊すように彼女が口を開く。

「シッマって、心…っていうか感情？無いでしょ」
「…何や？急に」

唐突な言葉に首を傾ける俺にだって、ね？と笑いながら彼女は自分でラッピングの紐を解き始めた。