08.『引っ越し』のハナシ ページ8
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智「……佐々木」
「……」
智「……」
「……傘、忘れたんだ」
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居づらくなったこの空間。
ピンクの折りたたみ傘を俺の前でフルフルって振って、笑う。
……あれ、昨日のこと怒っていそうだったんだけど。
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意外と怒ってない……？
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智「佐々木……？」
「んー？」
智「昨日は……、ごめん」
「ん？あ、はは。気にしなくていいの。」
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上履きを履き替えて、まさに準備万端な佐々木。
つま先をコツンコツンって2回地面に叩いて。
「行こっか」って佐々木は微笑む。
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智「傘。」
「んっ？」
智「俺が持つ。」
「あ、ありがと」
智「佐々木、背ぇちっちゃいから。」
「うっ、うるさいな！大野くんだって小さいほうでしょうよ！」
智「うるせぇ……」
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好きな人と相合傘できたらな、って思ってるそこのあなた。
すごくこれを自慢したい。
肩は触れ合って、顔は近いは距離は近いは。
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あー、もうやばい。
の一言に尽きる。
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智「ねぇ。」
「ん？」
智「俺さ、引っ越すんだよね。」
「……ん？」
智「だから、おれ。引っ越すの」
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あえて清々しい顔で言ってみた。
そうしたらキミはどんな反応をするか気になったから。
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「……んで、…………の。」
智「ん？」
「なんで、早く言わなかったの……？」
智「あー。」
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言ったら、佐々木に言ったら。
涙が溢れて溢れて。
この雨のようになるからなんじゃない？
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09.キミもオレも泣いて、泣いて…→←07.ピンクの折りたたみ傘
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作者名：成瀬
| 作成日時：2017年3月24日 20時
