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テレビ電話に切り替えて、かけ直す。
機械音が思ったより長く鳴り続けて、若干イライラになってきた頃やっと繋がった。
ポツンと映像が出てきたと思ったら、灰色の帽子を被ってるマスコットのドアップ。
「おーい、なんでいのてりなんだよ。顔見せろ笑」
『…グス…でもぉ…』
「いいから」
ゆっくりとカメラの角度が変わって、真っ赤な目をしてる伊野尾が画面に映る。
ほとんど無症状のわりに顔色が悪い気がするから心配が募るけど、とにかく笑顔で声をかけた。
「よ、やっと会えたな」
『……やぶぅ…ごめんねぇ…』細い声で謝りながら、大きい瞳からまたポロポロと涙が溢れてきた。
なんでそんなに泣くんだよ…ますます抱き締めたくなっちゃうじゃん。
「なんで謝るの?伊野尾は何も悪くないのに」
『…グス…だ、って、メンバーにうつったらどうしよ、と思って…』
まったくこいつは…自分のことをもっと大事にしろって。
『…山田も、ゆーとも、ドラマやってるのに…』
ヒックヒックとしゃくりあげるようになりそうで、早く止めないと
「そんなことより今伊野尾が大事だよ。」
そう言うと、俯いてた伊野尾は顔を上げた。
あ〜あ、だからそんなに泣くなって…心がぎゅっと締め付けられた。
「今は体調どう?まだだるい?」
『ふぇ…ぜんぜん、平気だよ?何もなさすぎて検査結果が間違ったのかな、って思うくらい…』
「そう、ならよかった」
カメラに向かって微笑むと、向こう側の泣き虫さんもやっと涙が止まった。
「こんな誰が感染してもおかしくない状況だから、誰も伊野尾のこと責めたりはしないよ。そもそも感染するのは悪いことしたわけじゃないし、責められる理由は何もないって」
『…でも…』
「でもじゃない。今大事なのは、伊野尾が安静にして、早く治ること!」
キュッと下唇を噛んだ。不服だけど言い返せない時の伊野尾の癖。
「明日俺ら全員検査を受けるけど、絶対大丈夫だから」
『…本当?』
「もちろん、伊野尾に嘘ついたことないでしょ?」
コクッと頷いた。小動物っぽくて可愛い。
「だから、伊野尾は何も心配しなくていいよ。安静にして、早く治そ?」
『…うん。』
「ご飯もちゃんと食べろよ?今日の夜何食べた?」
『……食べて、ない…』
気まずそうに言う伊野尾は、また視線をカメラから逸らした。
おいおい、もう22時過ぎたぞ…?
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作者名:yoku | 作成日時:2020年8月16日 11時