誰も知らない物語 ２

＊ ページ4

　私は思わず、息を呑んだ。




「…っていう予約」




　照れ隠しのように呟く若武。






　それって……





　それって……若武…………









「でも、7人でこれ一つを見つめてたら、かなりぎゅうぎゅうになっちゃうよ？」








　……………





「はっ？」





　間抜けな顔になる若武。


　いやいや、は？じゃなくて……。




「だって、私でしょ、若武でしょ、上杉君、黒木君、小塚君、翼、忍……


　ほら、7人」





　開いた手にピースをつけて、若武の眼前に見せつける。






「………っああ…」




　若武が、脱力したように膝に両手をついて呻いた。




「いや、俺が言いたいのはそういう事じゃなくて……」





　その時、




「ぷっ」






　誰かの、吹き出す声？音？が、ドアの方から聞こえた。






「あっははははははははっ」


「うそだろ……っ」


「アーヤ最強っ……」





　5人分の笑い声が、広い教室に響く。


　あれ、もしかして……。







　その通りで、開いたドアから現れたのは、上杉君やら黒木君やら…いつものメンバーで。


　全員、そろいもそろってお腹を抱えて笑っていた。





「お前らっ………」




　声を震わせている若武の顔は、赤らんでいるのか青ざめているのかよく分からない色で。



　でも、烈火のごとく怒っているのは確かで……。





「いつからそこにいたんだよっ！！」





　憤怒の叫びがこだまする。






「ちょうど立花が目を瞑ったところからだから、そんなに見てないぜ」


「それ最初っからじゃないかよ！」



　ちょっとずれた忍のとりなしに、さらに怒る若武。




「いやー、邪魔しちゃ悪いと思ってさー」

「大人しく聞いてただけなんだけどねー」




　ニヤニヤニヤニヤする黒木君と小塚君。


　上杉君と翼は、いまだに爆笑していて声が出ないみたい。


　若武はもう、怒り心頭っ！







「くっそ、こうなると思って、わざわざ場所も変えたのによっ！」




　そう吐き捨てる若武。まあまあ、そんなに……






　ん？場所を変えた？









　……わざわざ廊下から移動したのって、私の事を慮ったわけじゃなくて、ただただ皆に見つかりたくなかっただけって事っ？






　………バカ武っ！！！！




「お、おいアーヤ、いきなりプリプリしてどうしたんだよ」





　プリプリしてって……っ。







　バカ武！！！もう知らないっ！！




＊おわり＊

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