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「朝の会をはじめます」
いつものように海斗くんが司会で朝の会を始めるけど、やっぱり今日は落ち着きがなくて、雨の音が辛くて蹲ってしまった。
「海斗くん、今日は先生が司会を交代します。海斗くんは、席につきましょう」
そう言っても動けなくて、ギリギリと歯軋りをしている。
「少し、落ち着こうか。海斗くんコーナーに行きますか?」
そう聞くと小さく頷いて、タオルをください、と言うことができた。
「わかりました。落ち着いたら戻ってきてね」
そう言ってタオルを手渡すと、海斗くんコーナーの奥にある段ボールに入って、膝を抱えた。自分で落ち着こうと努力しているのがよくわかる。お兄さんに、迷惑をかけたくないと思っているのかな。
「朝の会を、続けます」
他の子もいるから、とにかく朝の会を進行して、授業の準備をする。1時間目が始まる頃には、松倉先生も来てくれた。
「海斗くん、松倉先生もここにいていいですか?」
優しく話しかけながら、海斗くんに対応してくれていると思ったが、松倉先生は急に焦ったような顔をして僕に手を振る。
「どうしました?」
「海斗くん、熱があるかもしれないです」
「あら、、」
「とにかく一回、保健室に行きますね。海斗くん、松倉先生と一緒に、保健室に行きます。お熱を測りましょう」
海斗くんは穏やかな松倉先生のことが大好きだから、その声に従って段ボールから出てきた。
「松倉先生と保健室に行きます」
「はい、行きましょう」
頷いた海斗くんの手を引いて松倉先生は保健室に向かった。
・・・
Matsukura
「あらら、高いな」
朝来た時はなかったけど、この1時間くらいで熱が上がってしまったようだ。お兄さんにお迎えお願いした方がいいかな。熱があるといつもより気持ちのコントロールも苦手になっちゃうから。
「海斗くん、お熱が高いので、早退しましょう。お兄ちゃんに電話をするね」
そう言うと途端に立ち上がって、首を横に振る。そして電話をかけようとした俺の腕を掴む。
「海斗くん?」
「お兄ちゃんは、お仕事です」
「そうだね。お兄ちゃんはお仕事です。でもお熱があるので、お迎えをお願いします」
「お兄ちゃんは、お仕事です。怒っています」
その言葉で、今朝何があったのかなんとなく理解できた。無理やり電話するのも、良くないかもしれない。
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イカ(プロフ) - ユルピさん» 遅くなってしまい、申し訳ありませんでした💦 (2023年4月6日 12時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
ユルピ - イカさん» お話見ました!とても如恵留くんが頑張っている様子が伝わり感動しました!また、リクエストしますね〜 (2023年4月6日 8時) (レス) @page44 id: 05904f8bd6 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠(プロフ) - こんにちは!ざっくりとしたリクエストだったのにも関わらず、とても素敵なお話にして下さり、ありがとうございました♡何度も読み返し楽しませて頂きます!これからもイカ様の作品を楽しみにしています(*^^*) (2022年12月12日 10時) (レス) id: 1f31f14422 (このIDを非表示/違反報告)
イカ(プロフ) - 睡眠さん» お待たせして申し訳ありません。「ずっと、一緒に」にお話を更新させて頂きました。お読みいただけると嬉しいです。 (2022年12月12日 8時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
イカ(プロフ) - 睡眠さん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい、申し訳ありません。ずっと、一緒にへのリクエストありがとうございます。少しお時間をいただくかもしれませんが、お待ちいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。 (2022年12月4日 22時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年10月8日 23時