明日も、明後日も #2

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「海斗くん、お兄ちゃんは忙しかったのかな」

「お兄ちゃんは、お仕事です。海斗、いい加減にして」

毎日の生活の中で、お兄さんにも、いっぱいいっぱいになってしまう瞬間があるのは仕方ないこと。それは相手が海斗くんだからとか、そういうことではなくて、まだ若いお兄さんがお母さんを亡くして弟を育てていくのは、並大抵のことではない。寧ろ、普段はとても頑張っていると思う。海斗くんのお兄さんは穏やかな人で、声を荒げる姿はあまり想像できない。だからこそ海斗くんは、今日、いつもと違う出来事に対応できなくて、どうすればいいのか、どうすればよかったのか一生懸命考えているんだと思う。

「海斗、いい加減にして」

耳に残っている言葉なのか、頭を抱えて、言葉を反芻する。熱が上がってきているせいもあって、海斗くんは心身のコントロールができなくなってきている。

「海斗くん、お薬を飲みましょう」

保健室では、辛くなってしまった時のために頓服を預かっている。積極的に使うべきではないと思うが、今日は、一度、心と身体を休ませた方がいいと思う。お兄さんに怒られたことが怖くて、どうすればいいのかわからないんだと思う。

「海斗、いい加減にして」

「大丈夫だよ。お薬を飲んで、少し落ち着いてから、またお兄ちゃんにお話ししましょう」

「お兄ちゃんは、お仕事です」

「そうだね。いまはお迎えじゃなくて、保健室でお休みしましょう」

錠剤を手渡すとこくんと飲み込んで、しばらくするとガチガチに緊張していた体から力が抜けてきた。この薬は、海斗くんが苦手に感じる刺激から守ってくれる。この五月蝿い雨音も、風の音も、嫌だと思わなくて済むと思う。

「ベッドで寝ましょう。お熱があるからね」

ベッドに寝かせるとぐったりと沈み込んで目を閉じる。薬が効いてきたかな。

「おやすみ」

本人には後でと言ったけど、やっぱり連絡しないわけにはいかなくて、一応如恵留先生に確認してからお兄さんに電話をかける。でもお仕事中なのか携帯は出なくて、会社に連絡しても出かけてるから伝えます、と言われてしまった。

「折り返し待ち、だね」

海斗くんの熱がこれ以上上がらないことを願いながら、事務仕事を進めることにした。

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