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「国木田さん、今日はありがとうございました」
部屋の前で、お礼だけはと行こうとする国木田さんを引き留めた
先程よりも雨足は速くなり、外一面を雨が覆っている。闇夜に映し出された国木田さんが普段と違って見えて、鼓動が速まった。
「礼を言われる程じゃない……どうした?」
人に勘づかれるほど私は挙動不審だったらしい。気づけば、私の頬には熱が集まっていた。
何処を見れば良いのか分からず、視線をさまよわせ、地面に落ち着いた。うるさく鳴る心臓を煩わしく思いながら、言葉を紡ぐ
「何でも…無いです」
貴方に見惚れていただなんていえるはずが無い。
ふと、あることを思いついた。
もういっそ、告白してしまえば良いのでは?
私達が2人きりになる機会なんてめったにない。この機会を逃してしまえば忙しい国木田さんに想いを伝えられる日は一体何ヶ月後になるのだろうか
しかしそう決めたところで、私の心臓が更に速く脈打つだけだった。喉が渇き、まともに声がでてこない
たった2文字。2文字だけを口にするだけなのに、どうしても言葉は出なかった
「熱でもあるのか?今日は体を温めて寝るんだぞ」
私の心の葛藤を知らずに、そう言って反対方向に足を向ける国木田さん
思わず手をのばし、その袖口を引いた。
途端に袖が水を吸いその色を変えるがそれには気づかない。
顔を上げると、見開いた藍色の瞳と目が合った
「好きです。ずっと前から」
静けさが、辺りを包んだ
雨音を闇が吸い取ったのだろうか。五月蠅く耳に届いていた音が、遠くに感じられる
1秒が何十秒にも何時間にも長く感じた。自分の浅い呼吸と、心臓の音が大きく響いているように思えた
沈黙に耐えられない。思わず地面に再び視線を移す
今すぐにでもこの言葉を撤回したいと思った。時間を巻き戻す事が出来るのであれば、巻き戻したいと思った。今すぐにこの場を離れたい。逃げ出したいと言う想いが、頭の中を駆け巡る。知らないうちに、手に力がこもっていた
何分経ったのだろうか。いや、1分も経っていないのかもしれない。身動き一つしなかった国木田さんが、手を私の頬に持っていった
視線を上げると、目に国木田さんか映るより早く唇に感じた柔らかく、温かい感触
それに驚くより先に背中に手がまわり、強い力で引き寄せられた
急な展開について行けず、ただ私は呆然と固まった
「…俺の手帳には、これを拒否するとは書いていない」
そう言う国木田さんの耳は、赤に染まっていて、私の心には温もりがじわりと広がっていった。
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にゃご(プロフ) - 伏見柚希さん» 返信遅れて申し訳ありません!感想ありがとうございます!感想を書いていただけると本当にモチベーションが上がります……。これからも頑張りますので、更新は遅くなると思いますがこれからもよろしくお願いします。 (2018年4月10日 18時) (レス) id: 489959ffd3 (このIDを非表示/違反報告)
伏見柚希(プロフ) - 書いてくださってありがとうございます。読んでいて猫とたわむれる社長をまじかで見てみたい気持ちになりました。これからも頑張ってください。 (2018年4月8日 22時) (レス) id: 269e1b2b92 (このIDを非表示/違反報告)
にゃご(プロフ) - あかりさん» ありがとうございます!そう言って頂くと本当に頑張ろうと思えます……。だいぶ更新は遅いですが、これからもよろしくお願いします! (2018年4月7日 12時) (レス) id: 489959ffd3 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 書いて下さってありがとうございます。なんだか心が温かくなりました。国木田さんの笑顔見てみたいですね。国木田さん推しなんで、国木田さんが笑顔になったら、ドキドキして顔が赤くなりそうです。これからも頑張ってくださいね。 (2018年4月6日 5時) (レス) id: 860abbe074 (このIDを非表示/違反報告)
にゃご(プロフ) - 紅茶さん» そう言って頂くととても励みになります。これからも頑張ります! (2018年4月2日 23時) (レス) id: 489959ffd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゃご | 作成日時:2017年6月30日 13時