温もり 国木田独歩 ページ17
雨が降った
空から落ちてくる水に温度が奪われ、暖かな昨日が幻想かと思うほどに冷たい空気が肌をなでる。
いきなりの雨に、太宰さんの予想通りにならないときもあるのだと思いながら、雨宿りをする気も起きずそのまま家へと帰る。髪からは滴がしたたり落ち、服は水を吸い肌にくっつき私の体温を奪い取っていた。
家に帰るには後何分必要だろうか
そんなことを考えて空を仰いだ。
雲が落ち込み、絵の具で塗りつぶしたように空一面が灰色だった。
店の灯りが雨に反射して、まるで宝石が落ちてきているかのような錯覚を覚えた
幻想的なその光景に、ため息をこぼす。自分の息は白く、だがすぐに闇に溶けて消えていった。
光景に時間を忘れ見惚れていると、その視界を黒が遮った。同時に自分を打ち付けていた水も無くなり、感じていた寒さがより明確に感じられた。
この傘の持ち主は誰だろうかと、後ろを振り向いく。
そこにいたのは、私が勤めている探偵社の先輩。いつも振り回されている国木田さんがいた。
眉間にしわをよせ、見るからに不機嫌なその人は、しかし何も言わずタオルを私の肩に掛けてくれた。
それにお礼を言って、何故ここにいるのかを問いかけた。
「ただの偶然だ。それよりも、今日雨が降るとニュースで言っていただろう」
「え、昨日太宰さんが今日雨は降らないと言っていたんですが」
「あの唐変木……」
そう言って、さらに眉間のしわを深くする国木田さん。
雨に打たれていた体に強い風が当たり、更に寒くなってきた。手先や足先の感覚がもう感じられない。少しでも暖まりたいと、腕を組んだ。
「…家まで送る」
「ありがとうございます」
2人で、2人きりで一緒に過ごせる。しかも、相合い傘をしているこの状況に、上がる口角を元に戻す事が出来なかった。嬉しさを隠すことが出来なかった。
これならば、多少寒くても傘を忘れて良かったかもしれない。
心を浮つかせながら、そんなことを考えた。
この人は、例え傘をささずに歩いているのが私でなくても同じ事をしたのだろうと、少しの寂しさを感じながら。
11人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にゃご(プロフ) - 伏見柚希さん» 返信遅れて申し訳ありません!感想ありがとうございます!感想を書いていただけると本当にモチベーションが上がります……。これからも頑張りますので、更新は遅くなると思いますがこれからもよろしくお願いします。 (2018年4月10日 18時) (レス) id: 489959ffd3 (このIDを非表示/違反報告)
伏見柚希(プロフ) - 書いてくださってありがとうございます。読んでいて猫とたわむれる社長をまじかで見てみたい気持ちになりました。これからも頑張ってください。 (2018年4月8日 22時) (レス) id: 269e1b2b92 (このIDを非表示/違反報告)
にゃご(プロフ) - あかりさん» ありがとうございます!そう言って頂くと本当に頑張ろうと思えます……。だいぶ更新は遅いですが、これからもよろしくお願いします! (2018年4月7日 12時) (レス) id: 489959ffd3 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 書いて下さってありがとうございます。なんだか心が温かくなりました。国木田さんの笑顔見てみたいですね。国木田さん推しなんで、国木田さんが笑顔になったら、ドキドキして顔が赤くなりそうです。これからも頑張ってくださいね。 (2018年4月6日 5時) (レス) id: 860abbe074 (このIDを非表示/違反報告)
にゃご(プロフ) - 紅茶さん» そう言って頂くととても励みになります。これからも頑張ります! (2018年4月2日 23時) (レス) id: 489959ffd3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:にゃご | 作成日時:2017年6月30日 13時