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146.覚悟をしておくように ページ46

 両家への挨拶が終わり、
 
 本格的な冬を迎えたある日のこと、

 私は自室で読み物をしていた。


 足先から体温を奪われるくらいに冷え込んだ夜は

 どうも人肌が恋しくなる。


 ゆらゆらと手元の行燈の灯りが揺らめく先、

 障子に影が伸びている。布団に横になりながら

 夢中になって本を読んでいると、

 静かに襖が開いて杏寿郎が入ってきた。


「まだ起きていたのか?」


「うん。ちょうど本が面白いところで…」


「そうか!しかし、今夜はかなり冷え込んでいるから

 切りの良いところまでにして、そろそろ眠りにつこう!」



 私は彼の言葉に頷くと、以前に相之助くんからもらった

 栞をそっと本に挟んで閉じた。


「A、今夜は同じ褥で寝ても良いだろうか?」


 先程まで落ち着いていた心が急激に音を立て始める。


「どうぞ…」


 私は布団を少し持ち上げて、彼の入る場所を作った。


「うむ。では、失礼する。」


 彼は布団に入ると私の頭を撫でて微笑み、顔を近づけた。

 綺麗な瞳に吸い込まれそうで私は思わず瞼を閉じた。


「目を開けてはくれないか。」


 ゆっくりと瞳を開けた瞬間、額にキスを落とされた。

 満面の笑みを浮かべる彼はどこか少年のようで…


「ふふふ。子どもみたい。

 杏寿郎の子どもが生まれたら同じように笑うのかなあ…」


 彼の子どもは、きっと彼に似て宝石のような綺麗な瞳で

 熱い心をもち、優しく、まっすぐな子になるのだろう。


 そんなことを考えていると、

 不意に手首を掴まれて褥に組み敷かれた。

 行燈の灯りが妖艶な杏寿郎を映し出す。




「子どもを作ろうか。」


「え!?」


「俺はAとの子が欲しい。

 愛する君と家族を作りたい。」


 迷いのない言葉に呼吸ができなくなるほど胸が苦しくなる。


「わ…たしも。私も欲しい!」


 私が勢いよく言ったからか、

 杏寿郎は目を丸くして驚いた顔をした。


 彼は私の頬に手を添えると、触れるだけの口づけをした。


「同じ気持ちでいてくれて嬉しい。

 しかし、少々俺の気が先走ってしまったな!」


 杏寿郎は私を腕の中に閉じ込めると、

 柔らかな声で優しく囁いた。


「授かりものだからなんとも言えないがな。

 籍を入れたら必ず。


 …覚悟をしておくように。」



 そう悪戯(いたずら)な笑みで言う彼に、

 私はただ赤面をして彼の胸に顔を押し付けていた。
 
 

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、コメントありがとうございます!夜空に咲く花のシーンは、私自身お気に入りのシーンなので、そう言っていただけて、とても嬉しいです!ありがとうございます。 (2022年6月12日 20時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 夜空に咲く花を背にした二人の情景が浮かぶ綺麗な文章にも癒されました。 (2022年6月12日 18時) (レス) @page44 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - ストレートに伝えて下さる煉獄さんに、またまた癒やされました。本日もご馳走さまでございます! (2022年6月12日 18時) (レス) @page43 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - エリスさん» エリスさん、応援ありがとうございます!ずっと読んでくださっているだなんて感激です♡ 更新の励みになります!ぜひ、最後までお付き合いくださいませ。 (2022年5月5日 0時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
エリス(プロフ) - 第三弾おめでとうございます^ ^こっそりとずっと読んでます(笑)これからも応援してます! (2022年5月4日 23時) (レス) @page12 id: 8779dd4f89 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年4月27日 20時

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