淡紅舞う 3【煉獄杏寿郎】

130.横顔 ページ30

　彼が行く道を、

　少し後ろからついて歩く。


　綺麗な髪だなあ。

　背筋が伸びていて、広く大きな背中をしている。


　この人が私の旦那様になるのかと思うと、

　なんだかくすぐったい気持ちになって、

　私は自分の足元に目を移した。


　下を見て歩いていると、

　突然前を行く杏寿郎の足がピタリと止まり、

　こちらに足を向けたので私はおもむろに顔を上げる。



　杏寿郎は私の手を握ると、ふわりと微笑んで私の隣に立ち、

「君の隣を歩きたい」と言った。


　その手のひらは大きくて、あたたかくて、

　ホッとするような不思議な力を持っている。


　いつまでも彼の手を繋いでいたいと素直に思った。


「A」


「はい。」


「入籍のことについてだが、

　二十歳の年の夏頃が良いかと考えている！

　入籍に合わせて祝言を挙げようと思う！

　今すぐ…となると互いの両親への挨拶もしていないのでな。

　焦らずに二人で準備を進めていこう。」



　二十歳の年…

　つまり来年の夏ということか。


　お父さん、お母さん、喜んでくれるかな？

　おばあちゃんは驚いて腰を抜かしちゃうかも。

　天国のおじいちゃんにも報告しないと…



「分かった。杏寿郎の考えに賛成します！」



「うむ！良かった！」
　

　
　隣を歩く彼の横顔が美しくて思わずじっと見つめてしまう。

　本当、端正な顔をしている。


　睫毛長いなあ。鼻筋も通っている。

　まっすぐ前を見つめるその瞳も、

　笑った時に少年のように幼くなる顔も、

　誰よりも熱い心も、その全てが愛おしい。



「そんなに見つめられると穴が開きそうだな。」


　杏寿郎はそう言うと、

　私の肩を抱いて自分の方へと引き寄せた。


　どうやら前を見ておらず、

　木にぶつかりそうになっていたようで…



「わっ…ありがとう。恥ずかしい…」
　

「はははっ！

　君に見つめられるのは光栄なことだが、

　怪我だけはしないようにな！」


　
　私は熱くなった頬を覚ますように手で顔を仰いだ。


「Aは本当に恥ずかしがり屋さんだな。」


　にっこりと微笑んだ彼は再び私の手を引いて歩き始めた。

　全身が熱くて、指の先まで火照ってしまったことが

　繋いだ手から伝わってしまいそうだ。

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