優男とちびっこ ページ22
*
納得いかないのかむくれるホソガと説得するホボミオッパ。
いや、ていうかなんで君がそんな不満そうな顔するかなぁ。別に自分が悪く言われるわけでもないのに。
まったく、これだから優男は困る。
「ホソガ」
「…なにぃ」
「私はさ、好きな音楽を作れて、好きな人達に歌ってもらって、聞いてもらえて。それだけでもう十分しあわせなの。大事になってそれが難しくなるほうがやだよ」
今までの生活に不満なんてない。むしろ天職だと思ってるし、自分が表に出ようなんて考えたことすらない。デビューの話だって最初は断ったくらいだ。
今回デビューはしたけど、今までのスタイルを変えるつもりはないし、これまで通り細々とやっていきたい。
だからこれ以上注目されて支障をきたすようなら、それはもはや私にとってただの“迷惑”でしかないのだ。
「…もったいないよ」
「そうかもね。でもいいよ。ホソガやみんなが知っててくれたらそれでいい」
私の手に収まらないほどの多くのものはいらない。貧乏人にとって贅沢は敵ですからね。
「…ずるいなぁヌナは」
「大人はみんなずるっこいんだよ」
「エーイ、そんなちびっこみたいな前髪してるのに大人だなんて」
「！こ、これは別に切りすぎて失敗したんじゃなくてこういうデザインなんですぅー！！」
ザクザクやってたせいで失敗して、修復を試みるうちにいつの間にかオン眉になってしまった前髪を、このタイミングでいじられるとは。
気づかれてないと思ったのに。
この馬、侮れぬ。
…前髪伸びるまではしばらく帽子被っとこ。
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作者名：tnk | 作成日時：2016年10月16日 22時
