強風注意報 ページ3
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風の強い日だった。
「わっ、ちょっと……!」
慌てた声が背後から聞こえて咄嗟に振り返ると、めくれ上がったスカートを両手で抑え込んでいるAが真っ赤な顔でこちらを見つめていた。
「……見た、の?」
「えっ……あっいや、見てないぞ!」
しまった、これではまるで俺がここまでの終始を見届けてしまったと勘違いされる。
「だって、見てるじゃない!」
「違う! Aの声が聞こえて振り返ったんだ! 足しか見えてなかった!」
「どっちも一緒じゃない!」
「わーっ!」
頬が避けるような痛みがやって来て、ああやっぱり叩かれてしまったと感じながら地面に身体を打ち付けた。「炭治郎!?」と、Aの声が上から降ってきて、腕を引き上げられると何度も何度も謝罪の言葉が彼女の口から出てくる。
「どうしようごめんなさい炭治郎っ、なんかカッてなっちゃって叩いちゃったの!」
「全然大丈夫だ、それより俺の方こそすまない!」
「もう気にしないから大丈夫、痛かった? 痛かったよね、本当にごめんね炭治郎……!」
ジンジンする頬を撫でながら、やはり俺の方の罪が重いと実感する。決してAが悪いんじゃない。
「(落ち着け……落ち着け……)」
あの瞬間、Aを目に焼き付けてしまっていたのは事実だし、白い腿をを見てしまったのも事実。それらに激しく自分が揺さぶられているのもまた事実だった。身体を激しく打ち鳴らす心臓を深呼吸で宥めて昂る謎の感情を抑えた。
「炭治郎……?」
「ほ、本当に平気だ! ちょっと考え事をしてたんだ、ははは……」
「そ、そう……?」
危ない危ない。こんなことAに知られたらまた殴られるどころか泣かせてしまうかもしれない。絶対に隠し通さなければいけない。
「そ、それよりその隊服……胡蝶さんみたいにズボンにしてもらったらどうだ? 今のままだと善逸も騒ぎ止まないと思うし……」
「うん、今度隠の人に相談してみるね」
恥ずかしげに目線を下げて頬をまた紅く染めるA。やめてくれ、そんな顔をされたら今日の出来事を忘れることができなくなってしまう。
ふう、と身体の中に溜まった悪い息を吐き出した。
暫く忘れられそうにないな、俺はなんて不埒な人間なんだと──頭を抱えた。
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琴音 - めちゃくちゃ、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月22日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:^^* | 作成日時:2020年1月8日 22時