【鬼滅の刃】炭治郎くんと！ (ページ14)

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離さなかったページ14

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「もういいから、離して！お願い！」
「絶対にっ、離してなんかやらない！」

ーー炭治郎まで落ちちゃう……！

落ちないし、落とさせない。

夜の峡谷ほど命の危険が伴う場所を俺は知らない。だからAとここで合同任務だと鴉から聞かされたときから十分に警戒しながら鬼と戦ったのに。どうして最後の最後で足場が崩れたりするんだ。

今までで一番強い恐怖の匂いがAからする。当たり前だ、崖の下は何も見えない。底があるのかすら疑問に思ってしまうほどの、黒。

なかなか強い鬼だった。耐久性のある隊服ですら爪で裂かれて左腕が使えない。片腕だけで人間一人を支えるというのがどれほど酷なものか、嫌でも分かる。

「いいよ炭治郎っ、痛いでしょ、重いでしょ？離しても大丈夫だから……！」
「大丈夫なんて言うのやめろ！俺の腕を両手で掴むんだ、必ず引き上げるから！」

怖くて怖くて仕方がなくて泣いている癖に俺を気遣って離せなんて言うのはよしてくれ。こんなところで死なせないしこれからも俺のそばで死なせるつもりなんてあるわけがない。俺が助けなきゃいけないんだ。

「炭治郎……っ」
「Aと一緒に帰りたいんだ、だから……！」

続きの言葉が出なかった。

だから「諦めるな」？だから「俺を信じてくれ」？言いたい言葉が多すぎて一つに絞れなかった。

深く息を吸い込み、巡る血液を全部右腕に流す。緊張で震えが止まらない。でも俺がやらなきゃ誰がやるんだ、俺しかいないだろう。

細い手首を決して離さぬように掴み、筋肉で膨らんだ右腕を徐々に徐々に引き上げる。

途中、何かが崖の壁に当たった後に空気と摩擦する音が聞こえた。Aの日輪刀が谷底に落ちてしまったのだろう。もうこの際日輪刀は仕方ない。Aの刀匠さんには謝ろう。

そして先程まで刀を握っていたAの左手が手首を掴む。──……助けて、と懇願されたような気がした。

「っ……いい子だ。もうすぐ、引き上げられるからな……！」

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