思春期たんじろ恋をする【キメツ学園】

20 パン ページ21

炭治郎side


蝉がころころと地に落ちて来た。
夏休みもあっと言う間に始まってあっという間に終わった。
高校一年生の半分が過ぎた。

太陽は照っていても風が冷たくなった。
今日は家のパン屋を登校時間ぎりぎりまで手伝った。
したら母さんが「これを持ってきなさい」と大量のパンを持たせてくれる。
昼飯のお弁当を自分で作る時間もなかったから母親に感謝して家を飛び出た。

それにしても多い量だった。
紙袋にぎゅうぎゅうに詰められたパンたち。
これはもう一人ではきっと食べきれないだろう。
善逸にでもあげようか？

そして迎えた昼休み。


「善逸、このパンいるか？」

「ごめん、今日の昼飯はパンだし俺はいいかな」


善逸はサンドイッチを頬張りごめんと謝る。
うーん、どうしよう。
流石に一人で食べれる量じゃないし母さんは友達とも食べれるように渡してくれたんだと読む。

俺はふとあることを思い出して急いで資料室に向かう。


「Aっ！」


思った通りだ。
Aは今日も一人でここにいる。
なんで一番に彼女のことを思い出してあげられなかったんだ。
俺にちゃんと話してくれたのに。

彼女には女友達と呼べる子がいなくて苦しんでるんだ。
心の中で「ごめん」と謝る。


「炭治郎…そんなに走ってどうしたの？」


A切羽詰まるように駆け込んできた俺に目を丸くした。
彼女は今にでも菓子パンを開封しようと手を動かしていた。


「菓子パンは駄目だ、こっちを食べてくれ！」


俺はまるで「受け取ってください！」と言わんばかりに紙袋を前に出す。
何か勝手に必死になって舞い上がっちゃって馬鹿みたいだ。


「…うわぁ、いい匂い…！」


彼女は持っていた菓子パンを机に置き紙袋に手を伸ばした。


「どうしたのこんなに…まさか私に？」

「あ、ああ一緒に食べたいなって」

「……！」


彼女の顔がぱっと華やぐ。


「ありがとう、たんじろ！」


彼女はぎゅっと俺の腕に抱き着いた。
柔い肌が纏わりついてくるようでまたも顔が染まってしまう。
これは無意識なのだろうか、それも分からないまま俺たちは席に着く。

資料室に置かれていたソファに腰を落とした。
紙袋から取り出したパンの種類は様々だった。

二人で頬張る、二人でも食べきれなさそうな量だった。


「俺の家がパン屋でパンを作っているんだ」

「そうなんだぁ…美味しそう」


Aはとっても嬉しそうに俺に笑いかけるものだから
こちらまで自然と笑ってしまうのだった。

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