#94『非合理的』 ページ9
「ポートマフィアの首領森鴎外殿」
福沢は進み出た。
「武装探偵社社長福沢諭吉殿」
森は福沢の方に視線を向けた。
そして、2人は一歩進み出た。お互いの部下はそれを冷や汗を流しながら見た。
「
福沢は鋭い目で森を見た。
「探偵社とポートマフィア。
ヨコハマの二大異能組織の長がこうして密会していると知ったら政府上層部は泡を吹くでしょうねぇ」
鋭い目付きで睨んでいる福沢に対し、森はにこやかに笑っている。
それがかえって恐怖感を覚えさせた。
「単刀直入に云おう。探偵員のある新人が貴君らポートマフィアとの『同盟』を具申した」
「ほう」
森は目を細めた。
「私は反対した非合法組織との共同戦線など社の指針に反する。
だがそれはマフィアに何度も撃たれ、切られ
拐かされた者から為された提案だった。言葉の重みが違う」
必死に訴える敦の姿が脳裏に浮かぶ。
猫と戯れていた福沢に拙い言葉で、必死に切望を言葉に表している姿が。
「故に、組織の長として耳を傾けざるを得なかった」
「お互い苦労の絶えん立場ですな」
森は楽しそうに笑った。福沢は森の方を振り向いた。
「結論を言う同盟はならずとも一時的な停戦を申し入れたい」
森は呆気にとられたように目を見開いた。
「興味深い提案だ」
森は思案するように目を細めた。
「T・シェリングを読まれた事は?」
「・・・・・・何?」
今度は福沢は目を見開いた。
「J・ナッシュにH・キッシンジャーは?」
「いずれも戦争戦略論の研究家ですよ」
そう言った朔の隣で太宰は「昔、誰かさんに教えこまれた」と小さく呟いた。
・・・・・・僕も同じく
朔も太宰と同じく、肺の病を抱えた時期はよく、読まされたいた。
「・・・・・・孫子なら読むが」
「国家戦争と我々のような非合法組織の戦争には共通点があります」
森は教師が教え子に諭すような口調になった。
「協定違反をしても罰するものが居ない。戦争の約束をマフィアが破ったら?
探偵社が裏切ったら?損をするのは停戦協定を信じた方のみ。
先に裏切った方が利益を得る状況下では限定的停戦は成立しない。あるとすれば完全な調和だが――――」
「それもあり得ない」
太宰が森の言葉を引き取った。
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飛沫(プロフ) - hurukawaさん» いえいえ、すみません。是非最後まで見てください。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - 見れました!ありがとうございます! (2021年1月15日 18時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - hurukawaさん» ご指摘ありがとうございます。こちらの不手際で非公開になっておりましたので、それを解除しました。見れるようになれたと思います。すみませんでした。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - #96がないです (2021年1月15日 17時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛沫 | 作成日時:2020年3月16日 15時