#133『健気な子供の瞳』 ページ47
「でも、兄さんは何故そんなに知っているんですか? 当事者であった訳では無いですし・・・・・・」
その問いに綾辻は鼻で笑った。
「辻村君は酒を飲むと何でも喋る」
「・・・・・・本当にエージェント何ですか?」
「召使いだ」
酒に弱い深月も深月だが、それを利用する綾辻も綾辻だ。
と散々人を弄って来た朔は自分の事を棚に上げ思った。
「久しぶりに行くか?」
オムライスを堪能し終わり、水を飲んでいる朔に綾辻は口を開いた。
「いいですけど・・・・・・兄さんは色々大丈夫ですか?」
朔が心配しているのは綾辻が特一級危険異能力者である故、勝手に外に出たら殺される事だ。
「大丈夫だ。幾ら良い狙撃銃を持とうが、撃てなければ意味が無い」
綾辻は窓の方を見た。窓に巧妙に設置されているのはガラスだ。
いつも通りのエグい方法だ。今の太陽の当たり方だと狙撃手達がスコープを覗けば、目が焼けてしまう痛みが襲うだろう。
朔は引きつった笑みを浮かべた。
綾辻の仕掛けによって無事に探偵事務所を抜け出すことができた。
向かったここは厳重に警備された異能特務課の図書館の一角。
隠し扉の奥に広がった書斎のような所だ。
朔と綾辻の目の前にいるのは長い緑の髪を結い上げた一人の女性だった。
綾辻と朔の事は眼中に無いのか、細い指でその人は本のページをめくっていた。
その人の指には長い年月この世に留まっている証しである血管が浮き出ている。
確実に歳をとっているが背はピンと伸びていた。
そこが朔を幼い頃育てていたシスターを思わせた。
女性は今まで読んでいた本を閉じた。
「久しぶりね、朔くんも。三年振りぐらいだと思うわ」
「三年二ヶ月振りですね、局長」
「局長補佐、よ」
局長と呼ばれた女性―――――辻村深月の母である辻村深月――――は微笑んだ。
「綾辻君も久しぶりね」
綾辻はその言葉を聞いていないのか、そのふりをしているのか本棚をじっと見ていた。
「今日はなんの用で?」
「貴女に少しお話をする為に」
朔の言葉に辻村は目を細めた。
「もうすぐこの命は果てます。その前に母のことを知りたいです」
朔は自分の右胸に手を当てた。
辻村は1度目を伏せると顔を上げ、朔の目を見た。
朔の目は純粋な光が灯っていた。会ったことがない母親を知りたい混じり気の無い瞳だった。
何時もの混沌とした瞳では無い。
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飛沫(プロフ) - hurukawaさん» いえいえ、すみません。是非最後まで見てください。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - 見れました!ありがとうございます! (2021年1月15日 18時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - hurukawaさん» ご指摘ありがとうございます。こちらの不手際で非公開になっておりましたので、それを解除しました。見れるようになれたと思います。すみませんでした。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - #96がないです (2021年1月15日 17時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛沫 | 作成日時:2020年3月16日 15時