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#117『終演は嫌疑感に溢れる』 ページ31

「魔人ですか?」

朔は惚けたフリをする。ますます、太宰の瞳は細められた。


「惚けるつもりかい?」


「惚けるもなにも、僕はその方を存じ上げておりませんよ」

朔の苦笑いに太宰は溜息をついた。


「魔人、本名はフョードル・ドストエフスキー。異能力は『罪と罰』で『死の家の鼠』の頭目」


太宰は魔人ーーーーフョードルの事を語り出す。一度だけあった事のある彼の事を。

常に不気味な微笑みを口に称えている事、

アメジストのような妖艶な紫色の瞳を持つ事、

驚く程頭が切れるが、体は細く、虚弱な事。


「私が覚えている魔人の特徴全て、君は持っている。……その赤い髪以外ね」


……嗚呼、この人は。



「それだけで貴方の言う魔人に僕が関わりがある?……あまりにも心許ない証拠ですね」


朔は挑発するような目を太宰に向ける。


「いいですか、太宰さん。似ているとかで関係は立証できません。物的証拠がね」

推理小説に出てくる犯人の台詞を言っている自分に朔は心の中で苦笑いを零した。


「僕がその魔人が頭目を務めている『死の家の鼠』に関わりがある、ような証拠を提示して下さいよ」


「じゃあ、なんで君は」

その時、朔のパソコンから警告音が鳴り響いた。


朔は指をパソコンに滑らせる。

太宰は不審な視線を朔に向ける。『何で警告音が鳴っているの?』と目が語っている。

……白鯨にハッキングしているのがバレてしましたね。

朔は太宰の方に生真面目そうな顔を向ける。太宰の瞳は冷たく、元ポートマフィア 幹部の名に相応しい。

「泉さんの出番ですね。あとは彼女に任せましょう」

太宰は溜息をつき頷いた。

朔はパソコンをさっさと片付けた。


「何故白鯨にハッキングしていた、私に言わなかったんだい?」

……貴方が聞いていなかったからでしょうが。

朔は等々呆れの眼を太宰に向けた。

まあ、バレないのが最適だが、別にバレたからって危ない事は無い。

少し疑念を深めてしまうが、証拠がない限りまだ大丈夫。


「……貴方が聞いて来なかったからですよ」


太宰はふうん、と澄まし顔を向ける。朔は嫌悪感を顔に出さないように心を落ち着かせた。

澄まし顔は見ていて嫌な気持ちになる。

……昔僕を虐めてきた子供にそっくりだ。


朔はパソコンを持つと通信室を出た。前を歩く太宰の影法師に朔は付いて行く。


この長い戦いはもうすぐ終演を迎える。

#118『死んでもいい理由』→←#115『懺悔者』



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飛沫(プロフ) - hurukawaさん» いえいえ、すみません。是非最後まで見てください。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - 見れました!ありがとうございます! (2021年1月15日 18時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - hurukawaさん» ご指摘ありがとうございます。こちらの不手際で非公開になっておりましたので、それを解除しました。見れるようになれたと思います。すみませんでした。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - #96がないです (2021年1月15日 17時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛沫 | 作成日時:2020年3月16日 15時

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