#115『懺悔者』 ページ30
「泉さん」
朔が口を開いた。
「僕には独特な死生観があります。まあ、それが独特だと知ったのはつい最近ですけどね」
朔は苦笑いを零した。自身の死生観の50%は彼の人の影響だ。
「“生と死は等価値であり自らの死こそが唯一の絶対的自由”」
朔の言葉に太宰は目を向けた。
この言葉は一見間違ったものに聞こえる。だが、実際は正しい言葉だ。
太宰が死を求める理由は“この酸化した世界から目覚めさせて欲しい”
『自由にして欲しい』と『目覚めさせて欲しい』どこか同質なものに感じさせる。
「だから、僕は貴女に祝福を言わなければなりません。『死』がまじかに迫ってる貴女に」
その声は狂気に満ちていた。
朔は一度目を伏せる。
「でも、僕はヨコハマの為に泉さんに生きて欲しい」
嗚呼、この言葉は偽りに満ちている。
一方、鏡花は朔の本心を知らず静かに泪を流した。
自分は求められていると知り嬉しかった。
「泉さん、貴女ならヨコハマを救えます。貴女は自分は人助けはできないと思はないでください。貴女の根底は僕と違い優しさです。
僕が幼い頃、読んだ本に書いてありました。“懺悔者の背後には美麗な極光がある”」
泉は朔の言葉を噛み締めていた。
「つまり、懺悔者――――――罪を償った人こそ一番美しいということです」
最後に言った言葉で朔は救われた。罪――――この世は罪人で溢れかえっている。
その人達が罪を償い、解き放たれた時、人間はもっとも美しくなる。
人間が罪から解き放たれる時は死んだときだろう。
……本心では無い偽りの言葉を吐き、自身が望まない方に導く。結構辛い事だ。
太宰が口を開く。
「いいかい、鏡花ちゃん。我々にあるのは迷う権利だけだ。溝底を当てもなく疾走る土塗れの」
のように」
太宰の言葉は通信室を満たして消えた。
「・・・・・・朔君」
沈黙を太宰が破った。
「君はそっくりだね」
太宰の鳶色の瞳を朔は見返す。太宰の瞳には最初に強化に向けた『怒り』も旧友を思い出したときの『悲哀』でも無い『疑惑』が浮かんでいる。
……やっぱり太宰さんは見抜いていましたか
朔は口角を上げた。
「誰にですか?」
態とらしく首を傾げる朔を太宰は睨んだ。
「自分でもわかってるのではないかい?」
“魔人にさ”
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飛沫(プロフ) - hurukawaさん» いえいえ、すみません。是非最後まで見てください。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - 見れました!ありがとうございます! (2021年1月15日 18時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - hurukawaさん» ご指摘ありがとうございます。こちらの不手際で非公開になっておりましたので、それを解除しました。見れるようになれたと思います。すみませんでした。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - #96がないです (2021年1月15日 17時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛沫 | 作成日時:2020年3月16日 15時