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#110『駒』 ページ25

「あぁ・・・・・・確かにとなると敦くんか」


その言葉に朔は顔を顰めた。


「元々そこが狙いのくせに・・・・・・」


太宰は戯けて誤魔化した。

朔の視野の中に噂をすれば敦が居た。
その顔はポカンとしていて面白かった。敦からすると異国人の会話を聴いてるようだろう。

朔は敦を横目に太宰を見た。


「おすすめは『細雪』ですね」


「潜入手段は?」


「それこそ特務課だな」


江戸川はドーナツをぱくりと食べた。





いよいよクライマックスだ。


……所詮、駒でしかありません。

太宰も、乱歩も、敦も、谷崎も皆。そして自分も

彼の人の手の上で踊らされている操り人形でしかない。


朔は一人不敵に笑った。




彼の人は尊敬しているが同時に朔は恐怖に駆られる。

彼の人は人の子なのだ。神や化け物とか妖とかでは無い。正真正銘の人の子だ。

彼の人が恐ろしく感じたきっかけはあの方の左手の薬指に銀色の指輪があった。
その時、体中に電気が通った。

あの方は『人』を愛していたのだ。その『人』は誰か僕は分からない。きっと死んだのだろう。

あの方は『人』を愛し、『人』を失った悲しみを味わった事がある。


『死を祝福』だと言うあの方が死を悲しむとは人笑わせだ。


もしかしたら『あの方』は・・・・・・


「朔君」


太宰の声で朔の思考は切れた。

太宰の後をついていってる自覚はあったが、ここまで来た道のりの工程をさっぱり覚えてない。



「どうしたんだい?」



太宰は心配そうにまた、訝しげに聞いた。


「いえ、少し考え事ですよ」


朔は通信室に入った。
通信室は真っ暗だ。

朔は早速、自信が抱えていた鞄からパソコンを取りだした。

綾辻の家から急遽とって来た物だ。

社員寮に置いておきたいが、疑われる可能性がある故、兄である綾辻行人の家の地下――――人形置き場の隣――――に普段は置いてある。



一応表向きはもしものために、だが本当は彼の人の白鯨にハッキングし、乗っ取り失敗した時ーーーーまあ。あり得ないがーーーーの予備だ。

朔は通信室のパソコンと自身のパソコンを繋いだ。

だが、あくまでこれはカモフラージュ。本当は白鯨にハッキングをしている。


太宰は朔の隣に座り、朔の様子を見ていた。


「・・・・・・手馴れているね」



「有難うございます」



それ言ったきり太宰は黙り込んでしまった。

#111『暴く者、守る者』→←#109『爽やかな笑顔』



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飛沫(プロフ) - hurukawaさん» いえいえ、すみません。是非最後まで見てください。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - 見れました!ありがとうございます! (2021年1月15日 18時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - hurukawaさん» ご指摘ありがとうございます。こちらの不手際で非公開になっておりましたので、それを解除しました。見れるようになれたと思います。すみませんでした。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - #96がないです (2021年1月15日 17時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛沫 | 作成日時:2020年3月16日 15時

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