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#106『僕も君と一緒に死んでしまおうか』 ページ21

『好き』という言葉を掛けられた事は何度もある。『あの方』に何度も言われた。
ただその場合『好意』を抱いている訳ではなく、歪な物だった。



こんな真摯な『好き』は言われたことが無い。



「君がそんなに反論するなら、この手に力を入れ君を殺した後に僕も死のうかな?」


朔は右手をスタインベックの頬に当てた。

スタインベックには家族もいるし、大事な妹も居る。スタインベックを死なせては行けない。


スタインベックは自身の左頬に当てられた手を見た。









「朔君!!!」


太宰の声がした。
スタインベックはその声の方を見た。その力が弱まったその瞬間、朔はスタインベック腹を思いっきり蹴った。


スタインベックは木にぶつかり、地面に座り込んだ。

朔は自身の首を押え咳き込んだ。

朔は咳き込み続けた。
目からは何年も流していない泪が頬を伝った。

息が出来ず、苦しいかったからでは無い。

朔自身、何故こんなに泣いているのかすら分からない。
そんな自分が気持ち悪く、朔は泣いた。
(むせ)る力も無くなり、息は喘ぎと化した。


止めもなく落ちる泪が地面を濡らした。

むしゃくしゃ気持ちを吐き出してしまいたかった。
初めて直接『好き』という感情を味わい、怖かった。人間、初めての事は怖がるし、戸惑う。

朔はまさにそうだった。

『好き』という気持ちをどう受けとめれば分からない。
朔はまだ子供なのだ。
躰がいくら成長していても、まだ子供だ。

朔にまだ与えられた事が無い感情が多すぎる。





朔は苦しいことを喋ろうとしない。自分で全てを抱え込む。
いくら感情が乏しくても貯めたものはいずれ溢れかえる。


それが今だ。


自分の感情がコントロールが出来ない、恐怖に朔は蝕まれれいった。


朔は顔を上げた。太宰がスタインベックの首にナイフを当てている。
当てられている当人のスタインベックは目を見開いた。

朔はスタインベックの目線の方を見た。
今は泣いている場合では無い。

#107『汚濁』→←#105『君の事が好きだった』



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飛沫(プロフ) - hurukawaさん» いえいえ、すみません。是非最後まで見てください。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - 見れました!ありがとうございます! (2021年1月15日 18時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - hurukawaさん» ご指摘ありがとうございます。こちらの不手際で非公開になっておりましたので、それを解除しました。見れるようになれたと思います。すみませんでした。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - #96がないです (2021年1月15日 17時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛沫 | 作成日時:2020年3月16日 15時

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