#97『堕ちた天使』 ページ12
朔は久作を見つめた。
「農業服を着た人に言われた」
農業服――――スタインベックか
「『神様はいるよでも君を愛してない』って」
朔は目を開いた。
その言葉は幼い頃の朔がスタインベックに言った言葉だ。
神様はいます。でも、僕のように愛されない人もいます
僕は確かに神様に愛されていない。
夢野久作もその仲間なんだろう。
昔から虐められ、煙たがられ、駒としてしか活用方法が無かった。
そっくりだ。
僕と夢野久作はそっくりだ。
違いといえば・・・・・・彼は精神操作の異能力者だが、僕は、それに近い異能力者。と言うぐらいだ。
僕は思わず言ってしまった。
「僕もその一人ですよ」
Qは朔を見た。
「僕は、貧民街にあったと或る教会で育ちました」
朔はポツポツと語りだした。
「僕はそこで虐められてました。殴られ、蹴られ、そんな日々でした。この身体にはそんな消えない傷が沢山刻み込まれています」
朔は自嘲するような笑みを浮かべた。
「僕は・・・・・・虐めてくる子達を殺しました。喉笛を掻き切って。当たり前、だと思ってました。他人を虐めたという罪を抱えた子達には制裁を下すべきだ。否、下さなければならないと」
朔は久作を見た。
久作は静かに朔を見ていた。
朔の瞳の色はアメジストのような紫色。
とても艶かしく綺麗だが、その目の奥にあるのは空虚だ。
「その後、教会は何者かに襲撃を受けました。僕以外は全員死亡」
怖い久作は思った。人が死んだ事をこうも淡々と述べる事が出来る人はそうざらに居ない。
でも優しい、感じがした。
「襲撃後僕はとある人に拾われ、今に至ります。その方は僕に言いました。『貴女は生まれん柄に罪を背負ってしまった』と。僕は知っていました」
朔は徐に自身の赤髪を指した。
「この髪は僕を悪魔だと示す物ですから」
「『悪魔』は神様によって地に堕とされた天使達を言います。だから、僕も」
君と同じ、神様に愛されてない一人です
「・・・・・・お兄さんは優しいね」
久作は朔を見た。
朔は驚きと戸惑いが入り交じった表情をしている。
朔は親みたいな温もりをもっている訳でもなく、親切心があるように思えない。
寧ろ、『愛』や『優しさ』とは無縁そうな人だ。
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飛沫(プロフ) - hurukawaさん» いえいえ、すみません。是非最後まで見てください。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - 見れました!ありがとうございます! (2021年1月15日 18時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - hurukawaさん» ご指摘ありがとうございます。こちらの不手際で非公開になっておりましたので、それを解除しました。見れるようになれたと思います。すみませんでした。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - #96がないです (2021年1月15日 17時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛沫 | 作成日時:2020年3月16日 15時