風が三十九吹き ページ41
＊
「審神者、話がある」
まだ外は暗く、早朝だというのに
私はその声の持ち主に容赦なく起こされた
......寝ている人のために、どうか遠慮という言葉を覚えてほしいものだ
「誰？」
「俺か？......三日月宗近という」
いや、誰？
寝起きの頭は回転が悪いのは知ってるが
それでも記憶にはない名前だということは、すぐに分かった
そんな訳の分からない人を部屋に招くのは流石に阻まれて、
襖の間からそっと彼を覗く
そこには、瞳に三日月を閉じ込めた男性がいた
ああ、この人は知ってる
`今ここで、死ね`
そういって、初日に私へ切りかかってきた人だ
......部屋に入れなくてよかった
私の選択が間違っていないことに安堵を覚えた
「何、そう警戒せんでもよい
別に人間、お主を殺しに来たのが目的ではない」
言葉は冷たいが、彼の腰には刀剣はたしかに刺さっていない
しかし、罠という可能性もありうる
「たしかに、俺はお主が嫌いだ
だが、この本丸の者のほとんどがお主を慕う
......俺はそんな彼らを否定するつもりはない」
個人の意見としてではなく、彼は今
この本丸の人たちを代表してここに立っているとでもいうのだろうか
でも、三日月は一体何が言いたい？
「朝餉の後で構わんから、大広間に来てほしいのだ
ああ心配しなくとも、罠をかけるとかそういう知能の低いことはせぬ
......お主になら、話してみようと思ったことがあるのだ」
「話したいこと？」
`二度も言わぬ`と顔をしかめた彼は、ふらっと姿を消す
なんて自由な人なんだ
寝ている人を起こしたことへの罪悪感はないわけか
......でも、態々大広間に集まって、彼が話すことって一体何だろう
`この本丸の者のほとんどがお主を慕う`だっけ？
ほとんど現実感のない言葉だし、三日月のついた嘘かもしれないけど
それでも嬉しかった
私が認められたみたいで
すごく嬉しかった
......でももう、こんな時間も長くは続かないんだったな
空いたお腹をさすりながら、厨房に歩いて行く
燭台切はもう起きてるはずだから、何か恵んでもらおう
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月夜桜(プロフ) - 失礼致します、「風が二十九吹き」が非公開となっているようです。 (2018年6月30日 9時) (
レス) id: 02630f3ef1 (このIDを非表示/違反報告)
AKASAN(プロフ) - とても面白いです！更新楽しみにしてます、頑張ってください！！ (2018年6月29日 13時) (レス) id: 1168bef346 (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - 面白いですね！これからも頑張ってください！あと、方便ではなく、方言ではないでしょうか？間違っていたらすみません。 (2018年6月25日 0時) (レス) id: e253f59a3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：露草浅葱 | 作成日時：2018年5月22日 15時
