第8夜 ページ9
「紫雨、早く箔雨を連れてどこか遠くへ!!他の女郎たちはもう非常口から逃がした。後はあんたたちだけ」
「霧雨姐さんは!?」
「あたしはここに残る!!」
「なんで!」
「一人は残ってないと、あんたたちに後追いが行っちまう。あたしはそれを防ぐ。早く、もうあすこに一人見えてる!!」
「そういうことなら問題いりやせんぜ」
キュっと軽快な音をさせるとこちらを向いて立ち上がった。
「職権乱用の時間でさァ」
「おい、お前何をしている!!女郎を逃がすのはここでは大罪だ!!」
「それはてめェらの方だ。違法者が俺に向かってどんな口きいてやがる」
そういって彼は脱いでいた上着を羽織り、車にマッキーで書かれた『真選組』の文字の前に立った。
「この違法労働女郎と一緒に捕らえてやろうか」
「まずい、真選組だ!!急いで逃げろ」
「急いで乗りなせェ。早く乗らねェと轢いちまいますぜ」
あたしら3人が乗り込んで、ドアも閉めないうちに高速でバックしはじめた。
「いやいやいや、そんな無謀な!!」
「やだー!!姐さん怖いー」
「姐さん、良く見たらこの人公務員の面じゃないよ!!」
さっきまでの信頼はどこへ消えたのか、今は不信感しかない。
「安心しなせェ。あの世へ行く時はみんな一緒でさァ」
「やっぱ、公務員じゃないー!!」
女たちの悲鳴は夜の遊郭街に鳴り響いた。
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作者名:紫 | 作成日時:2018年7月28日 16時