第7夜 ページ8
激しく燃え、崩れ始めている見世が赤々とあたしの目に映る。
「…紫雨姐さん!!」
こちらを見るなりすすけた顔をした箔雨が走ってきた。
「無事で良かった…」
「霧雨姐さんが!まだ中に居るの!!」
そう聞いた時頭の奥がジンと痺れる感じがした。
着ていた上着を脱ぎ、すぐ近くのもう今は使われていない井戸に浸し、被りこむ。
「箔雨、あんたはここに居な!!絶対にその人から離れるんじゃないよ!!」
二分経っても出てこなかったら、あたしを置いて、その子を連れてここから離れてくれと、彼に一方的に叫び、蒸しかえるような暑さの建物に足を踏み入れた。
幸いなことに、姐さんは入り口のすぐ近くで床に足が突き抜け動けなくなっているのを見つけた。
「紫雨…!!早くあんたもお逃げ。女将が死んだ。じきに他の楼主がここの女郎を買いにくるよ」
なんとか、抜けてしまった床を壊し、霧雨をおぶる。
「姐さん、この羽織りを被って」
既に火の海となりかけている道を火を踏もうがおかまいなしに走り抜けた。
「お、1分48秒。意外と速いじゃねェの」
「…わざわざ数えてる暇があったようで」
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作者名:紫 | 作成日時:2018年7月28日 16時