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第5夜 ページ6

「あんた、車でちったァ寝といた方が良いですぜ。戻った頃にはすぐに見世の時間ですぜ」




「お気遣い感謝しなんし。不思議と眠られねぇのですよ。旦那、あたしの話し相手にでもなって下さいよ」





「旦那っての止めてくれる?そういう媚ってくるの嫌いなんでさァ」





「あら、あたしの周りは媚売られるのが好みの旦那ばかりなんしたから。失礼しんした」





中々癖のありそうな男と車に乗っちまったもんだ。そう思いながら窓の外の景色を眺める。





「沖田さん、菓子食べなんすか?」





沖田と名乗った男に食べていた菓子を勧める。




「どんな?」





「餅ですよ。柔らかい」




「それならもらいやす。ちょっと手空いてないから、口に放って」




餅を遠慮なく口の中に投げ込んだ。





「羽二重餅ですかィ」





「ようわかりんしたね。伊勢の物なのに」





「まァ、生まれも育ちも江戸って訳でもねェからな。それなりに色々見てきてるんでさァ」





「姐さんが、伊勢の出でね。好んでよう食べてなんした。今回も他の女郎が持たしてくれしんしたのに、殆ど食べずに逝っちまって。別にあたし、菓子なんざ好きじゃないのに、食べなくちゃいけなくなって」





「あんたは何が好きなんでさ」





「あたし?あたしは、舞茸が好きかなぁ」





「…珍しいもんいきやしたね」





女郎が嫌いと見せかけながら、別にあたしに何か遠慮する訳でも、蔑んだりすることもない。





めんどくさそうな喋り方をしているけど、ちゃんと返事を返してくれる。





そんな至極不器用そうな、女に興味が微塵もなさそうなこの人は良い話し相手だった。

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作者名: | 作成日時:2018年7月28日 16時

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