第39夜 ページ40
姐さんは、結局道中の日、白い打掛けを着ることは無かった。
「新緑はあたしの印。目の悪いあの人にも、すぐあたしってわかるように」
そう言って、新緑の打掛けを迷うことなく選んだ。
少し前を歩く姐さんは、顔は化粧をしているから、あまりわからないが、首は、かなりの汗をかいている。
(お願い。もう少し。もう少し頑張って…!!)
きっとかなりしんどいはずなのに、笑顔を崩すことなく歩いていく。
そんないつでも凛とした姐さんがみんな大好きだった。
周りの人にはきっと3人しか見えていないことだろう。
でも、あたし達3人は確かに感じていた。
亡くなっていった彼女達の在った気配を。
死んだ人は戻って来ないって言うけれど、見えないだけで、存在している。
いつだって、あたし達の傍にいる。
いまだって、横に居る。
道中しているのは、あたし達だけじゃない。雨の名を持つ、あたしたち全員。
全員で、大好きな姐さんを送り出す。
大好きな人の腕の中にやっと飛び込んでいける姐さんを。
その時、風も無いのに金木犀の花びらが舞った。
「おめでとう」
花の香りに混じりながら、声が聞こえた気がした。
懐かしい人たちの声が。
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作者名:紫 | 作成日時:2018年7月28日 16時