【gnsn】こっちを向いて公子様 (ページ3)

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EP__1. ページ3

「なっ…誰の許しを得てここに入ってるんだ貴様！」
「許し？ここに入るのに許しが要るのかい。初耳だなあ。お前らこそ分かってないようだから言っておくが、北国銀行から借りたお金"800万"。期限はとうに過ぎて二回も見逃したのに未だに返済はナシ…どういうことかな？」
「北国銀行…貴様、ファデュイの……！」

　人気が賑わう昼の璃月。とある薄暗い場所で、不法侵入されたと喚く男性が一人。不法侵入した人物相手に腰抜けになりながら声を張り上げると、目の前の男は淡々と借金のことを口にした。
　"北国銀行"。スネージナヤから全国に支店を広げた銀行であり、主にファデュイの密会場所でもあり、資金活動もここから貰っている。見込みのある客に対しては融資をするものの、未払金や借金があると債権回収部門が動く。
　今回、「公子」のタルタリヤは別にその部門に所属しているわけではなかったが、璃月に属しているファデュイが不運にも彼だけだったのも相まって回収に当たることになったのだ。

「公子様、お腹空いたので終わったら昼食を万民堂で食べません？」
「…キミは空気を読むことを知ろうか」

　呆れた溜息。あまりにも空気が読めない後ろの女性に思わずそれしか出ない。ほら見ろ、そこの腰抜け男も間抜けの顔に変わってる。と、冷めた目でそれを見つめる。

「空気を読む前に私のお腹が空気を読まずに鳴くところでしたよ」
「どれだけお腹空いてるんだ。はあ、いいよ、もう。万民堂ね、わかったから仕事してくれる？」
「しましたよぉ。仰せのとおりに先にこの人が雇っていた傭兵は排除しました」
「なっ…！」

　お腹が空いたと駄々をこねる女性に、呆れたようなファデュイの男。万民堂での食事が決まったことはさておいて、雇った傭兵が排除されたことに驚きを隠せない男。見た目、とても可憐で弱そうな女性が筋肉質のある名がしれた傭兵団を相手にし、しかも倒したというのか────。

「やる時はやるよね、キミ。いつもそうだったら助かるんだけど」
「公子様のご命令ですからね」
「偶に命令に背くときあるだろう」
「機嫌が悪い時です」
「気分屋か？」

　何故目の前で言い合いを見せつけられているんだろう、と呆けながら借金男は思っていた。しかし直ぐに「さて」と声がかかり、肩が跳ね上がる。

「借金は────」
「払うっ…！きょ、今日中に！振り込む！」

　こんな変な二人組にまた来られてもたまったもんじゃない。そう思った。