【忍たま】色恋にうつつを抜かせ【短編集】 続

心美しき 1 ｰ鬼蜘蛛丸ｰ ページ31

福富屋のカメ子ちゃんには従者がいる。
そりゃあ、あの福富屋のお嬢さんだしいて当たり前･･･とは思うのだが。

俺が言ってしまうのもなんだが、無愛想な人。

笑った顔なんて一度も見たことがない。
けどカメ子ちゃんからの信頼は物凄く厚い。

そんな時、カメ子ちゃんとその従者さんを船で堺の港まで送ることになった。

鬼「船酔いは平気ですか？」

カ「はい！」

鬼「従者の方は？」

「特に問題ない、カメ子様 お水をどうぞ」

カ「あ、ありがとう！」

鬼「(相変わらず無愛想だな･･･笠を被ってるせいで顔もよく見えないし･･･)」

口元を見ればいつもしかめっ面なのは伝わってくる。
カメ子ちゃんはとてもいい子だから乗せてもいいのだが･･･。

何となく、従者の方はあまり好きに離れなかった。

カ「ウミネコが鳴いてますね」

鬼「雨が降るかもしれません、中に入っててください。従者の方も」

「敵襲があるかもしれない、雨が降るまで様子を見ます。カメ子様は濡れないところへ･･･」

カ「えっでも･･･」

「私は大丈夫です。さっこちらの手ぬぐいをお持ちになって中へどうぞ」

船内へと向かわせる。
甲板には俺と従者の方･･･沈黙が続いた。

なにか話すべきだろうか･･･しかし。
そう考えているうちに風が強く吹き、従者の方の笠が空に飛ばされた。

鬼「あっ笠が！」

「くっ･･･突風がっ」

鬼「大丈夫･･･で、すか･･･」

心配で駆け寄ろうとすれば目が合う。
初めて顔を見たが･･･女性だったのか･･･綺麗な顔立ちに目が奪われた。

鬼「･･･あ、そうだ 笠！」

「いい･･･笠くらい後でどうにでもなります、しかし参った･･･これはすぐに雨が降りそうだ」

鬼「従者の方も早く中へ、濡れれば風邪をひきます」

「濡れただけで風邪をひくほど、ヤワじゃない･･･というか、何故そんなに見てくる。」

鬼「えっ！？あ、いや･･･まさか女性とは思ってなかったので」

「カメ子様は女の子なのだ、女性が従者なのは当たり前だ！だが、それが山賊などにバレると面倒なのでな。笠を被って男装をしているだけだ」

鬼「そうだったんですか！いやーまさかこんなに綺麗な方だったとは･･･」

「綺麗･･･か」

またしかめっ面に戻る
なにか癇に障ることを言ってしまっただろうか･･･心配になり、近寄って声をかけると手を弾かれる。

ﾊﾟｧﾝ

「触るな！！」

鬼「えっ」

「はっ･･･いや、すまん･･･悪いがもう私は中に入らせてもらう」

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