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ふうっ、と一息吐いて椅子に座る。
今日のお昼、どうしようかなぁ ⋯ なんて朝ごはんを作ったばかりなのに考えてしまう。
ふと机の上に目を向ける。
『 ⋯ えっ?! 』
ここにあるはずのない書類に思わず大きな声を上げる。
咄嗟に口を塞いだものの、その声に反応した麦がキッチンから顔を覗かせた。
『 ごめっ、おっきな声出して 』
「 大丈夫ですよ、どうかしましたか? 」
『 うーん、うん ⋯ これ、忘れ物だと思うの私だけ? 』
書類を手に取り、顔の前に出す。
横から覗き見れば、麦も驚いた顔をして少し困ったように笑った。
「 私も、そう思います 」
『 ⋯ 電話、かけよっか 』
はい、との麦の返事に、スマホに手を伸ばす。
着信履歴の一番上に電話をかける。
さっき家出たばっかりだし、追いつこうと思えばすぐだとは思うんだけど ⋯ 。
「 どうですか? 」
『 だめだね、出ないや ⋯ ゆたかまだ寝てるよね? 』
「 はい、まだ ⋯ 」
『 ん、了解ちょっと行ってくるよ 』
「 え? 」
『 鍵かけてね、ピンポンには応答しないこと、帰る頃にまた電話するから 』
ゆづるさんの立ち位置的にも、たった一度の失敗でどうなるか分からない。
それなら早い方がぜ〜ったい、ぜ〜ったいいい。
「 いっ、今からですか? 」
『 うん、ゆづるさんの立場じゃ忘れ物一つで大事かも 』
機捜の隊長、大事な資料の可能性だってある。
棚の中からゆたかがたくさん持って帰ってくるクリアファイルを取る。
資料を挟み、トートバックへ、スマホも放り込み玄関へ向かう。
「 Aさっ、待って待って 」
『 大丈夫だよ、あっベランダも閉じといてね、一応 』
「 違いますよっ!、Aさんが! 」
『 なになに、どっ ⋯ えっ?!なに?! 』
「 危ないから! 」
振り向き、急に隠された視界にまた大きな声を上げる。
頭の上に被さる視界を覆うものをとれば、黒いバゲットハットで。
顔隠しにでも、ってことだろうなぁ ⋯ 麦は優しいなぁ。
『 これでも“ 元 ”警察なんだけどねぇ 』
「 それでも!何かあったら ⋯ 」
『 麦ってば心配性〜 ⋯ ありがとね 』
不安そうな顔の麦に帽子を返すことはできなくて、大人しく被り直す。
まぁ ⋯ 同僚にあっても面倒くさいし丁度いいか。
『 ⋯ いってくる、戸締り任せたよ! 』
「 ⋯ 気をつけて下さいね 」
『 もっちろん、すぐ帰ってくるから 』
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作者名:たなか | 作成日時:2024年3月14日 16時