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信号待ちで車が止まる。
未だ睨み合っている中、ノック音が響いた。
『 あっ、JK 』 「 言い方 」
「 ホントだ、なんてー? 」
伊吹君が問いかければ、向こうも困った様子。
「 おい、反応するなよ 」
「 一ついくらですか〜?? 」
『 いくらだっけ 』
「 そもそも売ってないよ 」
そこは乗ってよ一未ちゃん。
「 綺麗なおねーさん、メロンパン一つ! 」
「 Aちゃん綺麗って見る目あるじゃーん 」
「 なんで上から目線なんだよ 」
小さく呟くと、窓を開いた。
なんだ、最後までほっとくかと思ったのに。
「 ⋯ ごめんね、今ね売り切れなんだ〜 」
「 いちご味!お願いします〜! 」
「 いちご売り切れなんだ 」
「 いちご味いいよね〜 」
「 ⋯ あっ、おい、青青青 ⋯ 早く 」
「 分かってるって 」
JKちゃん達を置いて車が進む。
申し訳ないなぁ ⋯ 見た目普通のパン屋だし。
「 はぁ ⋯ 」
『 志摩ぁ、幸せ逃げるよ 』
「 誰のせいだと思ってんだ 」
『 志摩のせい 』
「 ふざけるな 」
そんな怒る???
一未ちゃんてば、こわーい。
「 ねぇねぇ、メロンパンいくらにする? 」
「 1個1000円かな? 」
『 高っ! 』 「 高いだろ 」
え、ぜっったい買いたくない。
「 えっ、だってメロンまるごと入ってんだろ? 」
『 入ってないよ!まるごとメロンって名前だけど ⋯ 』
「 メロンまるごと入るパンって、かばんの中に入んないよ 」
「 どういうこと? 」
伊吹君の問いかけに志摩の渋い顔。
当の本人は?と首を傾げたまま。
「 まるごとってのは例えとか ⋯ 雰囲気、比喩だよ 」
『 そうそう、だからメロンは入ってないね 』
「 えぇ〜!ガッカリ ⋯ 」
「 お前にガッカリだよ ⋯ 」
「 もお〜、夢見ちゃったな 」
「 おばちゃん!メロンまるごと入ってないんだって!! 」
⋯ え怖い怖い、誰に言ってるの、伊吹君???
「 誰だよ!誰に話してんだよ 」
「 えっ隣の車、さっきからずっとこっちみてんの 」
『 ⋯ メロンパン好きなのかな 』
「 かなぁ 」
うぅん、と何やら伊吹君の悩む声。
彼の方に目を向ければ、窓を開いていた。
「 おばちゃーん! 」
「 今日ね、メロンパン、売り切れ!ごめんね! 」
『 ふはっ 』
「 やーめろ、やめろ、もう 」
志摩に腕を叩かれながらも本人は全く気にしてない。
伊吹君、やっぱ面白いな。
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作者名:たなか | 作成日時:2023年12月9日 18時