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「 この夫婦 ⋯ 本当に人質か? 」
「 はい!話逸らした!Aちゃんに聞かれたくないからってさぁ ⋯ 」
『 まっ、変に協力的だね 』
「 凶器で脅されているようには聞こえない 」
『 平和で何より! 』
「 平和ではないだろ 」
[ それで ⋯ 岸君が専務さんを ⋯ ]
[ ⋯ っ、“天誅だ”って、“あいつは殺されてもしかたのない人間だ”って岸が ⋯ ]
通信の乱れる音。
んんっ、車間距離!
「 ごっ、あっあー油断した 」 「 距離! 」
「 分かってるよ! 」
気になるところで終わったけど ⋯ だいぶ情報は増えた。
岸の件、あれは動機には十分だ。
と、芯を赤色に変え丸をつける。
「 まっ、今の聞いたよな、加々見は犯人じゃない 」
『「 ⋯ 」』
今の話で、“加々見は犯人じゃありません”とは言えないし、思えない。
むしろ岸がそう言ったから殺しても ⋯ の線ができたくらいなのに。
「 ⋯ だったら、どうして逃げてるんだ? 」
「 自分の無実を証明するために決まってんだろ 」
その答えに納得がいったのか、いってないのか。
志摩は何も返さなかった。
「 いやさ、考えてもみろって、朝会社来て、上司が死んでたらビビるだろ 」
「 そこへ他のやつが来て、自分が犯人だと思われる ⋯ そりゃあさ、慌てて逃げたくなるよ 」
『 じゃあここまで来る意味は? 』
そう問いかければ、“う〜ん”と唸る声。
志摩は腕を組んで仏頂面のまま。
「 そもそも、“自分が来た時にはすでに死んでました”って正直に言えば済む話だろ? 」
「 いいや、済まないんだよ、俺には分かる、刑事になっても職務質問を受ける俺には分かる 」
「 自慢げに言うな 」 『 自慢にならないね、伊吹君 』
「 大抵の犯人はやってないって言うんだ、やってても 」
「 中には本当にやってない奴だっているだろ? 」
「 いないとは言わないけどさぁ ⋯ 」
『 少数だよ、それも今みたく逃げ続けるのはもっと少数 』
「 ⋯ 志摩ちゃんもAちゃんもさぁ 」
「 ん? 」『 なんでしょ 』
「 少しは人を信じてみなよ 」
「 ⋯ バカか!ってバカなのは知ってたわ 」
「 知ってたら聞くな! 」
むっ、とした様子で反論する伊吹君。
何歳の会話?と苦笑すれば、志摩がため息をついた。
「 違う!人間の野生のバカなのは知ってた、刑事としてもバカなのか 」
「 それほぼ意地悪な 」
『 なんならただの悪口だよね 』
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作者名:たなか | 作成日時:2023年12月9日 18時