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赤井としては素晴らしいチャンスだと、内心ガッツポーズをした。

目の前にはちょっと気になる女。隣には彼女をよく知る友人。“お近づき”には最高のセッティングだ。


「私たちはどうする?」


飲みかけのグラスを持ち上げて、Aが尋ねた。降谷が箸でフライをつつきながら「取り敢えずは消費だな」とテーブルに並んだ食事を見る。

まだ残っているものもあるし、Aの胃もさほど埋まってはいない。酒ばかり入れていたため、容量はまだある。

なるほど、これからが戦争ってわけね。赤井がAにメニューを手渡してきたので、二人で顔を突き合わせて覗き込む。


「ライ、ジン、バーボン、スコッチ。どれにしよう」
「おいボトルオーダーする気か?」


降谷の怪訝な目にAは「そうだけど」と返すと、赤井が「バーボンにしよう」と言い始めるのでもう、歯車は止まらない。

ボトルでやってきたバーボンをグラス三つで分けて、ゆらゆら煽る。


「ははっ、共食いだ」
「お前な……次はライにするか」
「おい、俺に共食いさせる気か?」


夜も深まり、時計の針がどんどん数字を増していくのに比例して、彼らの酒瓶も増える増える。

金額など気にせずに、それはもう浴びるように飲んでも、変わらずけろっとしている三人に、店員が引き始めたあたりで店を出た。

伝票の数字など知らない。赤井が攫っていったので文句は言わずにありがたく頼んだ。

酔うと口数が減る降谷が黙り始めたので、それを危惧して彼を先にタクシーに放り込み、後から来た赤井と三人で居酒屋を後にする。


 
夜の街に馴染んでいくタクシーの車内で、黙る降谷をさて置いて、赤井とAは他愛ない話から下世話なことまでペラペラと話した。

一番最初に降谷を下ろし、次にFBIのメンバーが泊まるホテルで赤井が降りた。


「今日はごちそうさまでした。明日、ちゃんと登庁してくださいよ」
「君こそ寝坊するなよ」
「一番心配なのはジョディさんですけどね」
「いや、俺の経験上キャメルが一番まずい」
「それは大変だ。貴方の声でモーニングコールでもかけてあげてください」
「朝から悪魔の怒鳴り声を聞きたいのなら、そうしてやろう」
「あぁ、キャメルさん。悪魔を送り込んでしまったみたい」


わざとらしく十字をきってみせると、赤井は「明日の朝が楽しみだな」と笑う。


「じゃあ、おやすみなさい。いい夢を」
「ああ、君も。おやすみ」


タクシーは発進すると、ネオンに溶けていった。

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ぱーぷる姫(プロフ) - すみません、下のコメントで気が付きました。気づくと鳥肌です!また1から読み直します! (2022年8月25日 0時) (レス) id: be661beda4 (このIDを非表示/違反報告)
もちもち - 最高でした。言葉選びとかセンスがツボに刺さりまくりました。赤井と糸川で「赤い糸」になるのも気づいた時に鳥肌止まりませんでした。とにかく最高でした。 (2021年5月5日 1時) (レス) id: b3862cde2f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続編お願いします(T_T) (2020年8月8日 13時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
vm - とても、すてきな言葉のセンスから見える世界観がとっても、大好きです!なかなか赤井落ちはないので、ありがとうございました! (2020年5月1日 0時) (レス) id: d0a5fbaba4 (このIDを非表示/違反報告)
syubyi - いい、、すごく良かったです、、、続きを、、後日談的な続きを、、 (2020年4月11日 14時) (レス) id: 4a176e1186 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:◎たなは◎ | 作成日時:2017年4月4日 23時

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