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赤井秀一の口から放り出された煙草の火が消えると同じほどで、降谷の言葉も終わりを告げ、喫煙所に静寂が舞い降りた。


しんと静まる、紫煙に満ちた室内は息苦しい。それは煙草の煙がそうさせているだけではなかった。


「……どういう、ことだ」
「どうもこうもないんだ、赤井! 俺が叩いたって言うことを聞かない女だ! …………僕は、それに今まで縋ってきたも同然です」


落ち着くと一人称が戻る男を前に、赤井は口を開けたまま、呆然とした。取り出す言葉が見つからない。


「情けない話ですが……。ねぇ、赤井。貴方、本当に糸川のこと好きですか」
「あぁ、好きだ。誓おう」
「そういうのは教会でやってください」


君がたずねたんだろう、と言いたいところだが、反論はしなかった。


「助けてください。あいつを。だっておかしいでしょう! 現場が自由に動けるために、僕が仕事をしやすいように。そのためにあいつが上に身を差し出すのは、お門違いだ!」
「…………靴好きの友人からプレゼントされたと聞いていた」
「そりゃそうです。半分は嘘ですが、半分は本当なんですから。上の人間にひとり、女性の足に興奮する男がいる。そいつがいつも靴を買い与えて、それをあいつが履くことを代償に現場の実働許可や裏回線の使用許可をもぎ取ってきている」


ぐしゃり。降谷は褐色の手で、くすんだブロンドの前髪を掻き込んだ。

降谷は、赤井の見たことのない、悔しさと悲しさの混じった目で、床に寝転ぶ煙草を見つめる。


「このままじゃ駄目なことはわかっているのに、僕の立場ではどうにでもできない。僕が動けば、確実に現場も職場も困ることなんて、目に見えているんです。現場が困れば、最悪死人が出る」


バーボンの面影など、どこにもなかった。ただあるのは、苛められている妹を思う兄のような眼差し。


「もう、あいつの足に窮屈そうな靴が足かせのようにくっついているのは、見たくないんです」


消え入りそうな声で、男は言った。お願いします、赤井。あいつを、助けて。

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ぱーぷる姫(プロフ) - すみません、下のコメントで気が付きました。気づくと鳥肌です!また1から読み直します! (2022年8月25日 0時) (レス) id: be661beda4 (このIDを非表示/違反報告)
もちもち - 最高でした。言葉選びとかセンスがツボに刺さりまくりました。赤井と糸川で「赤い糸」になるのも気づいた時に鳥肌止まりませんでした。とにかく最高でした。 (2021年5月5日 1時) (レス) id: b3862cde2f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続編お願いします(T_T) (2020年8月8日 13時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
vm - とても、すてきな言葉のセンスから見える世界観がとっても、大好きです!なかなか赤井落ちはないので、ありがとうございました! (2020年5月1日 0時) (レス) id: d0a5fbaba4 (このIDを非表示/違反報告)
syubyi - いい、、すごく良かったです、、、続きを、、後日談的な続きを、、 (2020年4月11日 14時) (レス) id: 4a176e1186 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:◎たなは◎ | 作成日時:2017年4月4日 23時

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