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朝、赤井が登庁するとAのデスクには既に大量の書類が山となっていた。
いつもこうだ。山の書類はふとしたときに綺麗さっぱり無くなっていて、また山のように積んである。全て彼女が片付けているのであれば、かなりの重労働だ。
「おはよう、シュウ! 起きたらホテルにいてびっくりしたわ!」
「キャメルに感謝しておくんだな。お前の重い図体を引きずってくれたんだ」
「失礼しちゃうわ! 女性にそういうこと言う!?」
「お前ゴリラだろう。メスということにはしといてやる」
「サイッテー」
レンズ向こうの目が三角につり上がったところで、職員が二人の隣を駆け抜けていった。
「糸川管理官!」
赤井は思わずその声に反応して、そちらに目を向けてしまった。目を向け、ハッとする。なぜ今反応した? まだ夢のことを引きずっているのか?
対して糸川はこちらに気づく様子もなく、駆け寄ってきた職員の書類に目を通しながらインカムで何かを話している。
時折打つ相槌の声が、赤井の優秀な耳が拾ってしまい、赤井は頭を抱えたくなった。
「なぁに、シュウ。Aの方を見て。もしかして」
「あ゛?」
「……藪蛇ね」
ホールドアップ。手をひらひらさせてジョディがニヤニヤ笑った。本当に面倒な奴に知られてしまった。
元彼女にこういった話題はいかがなものか、だが赤井はそんなことどうでもいいとばかりにジョディを睨みつける。
「余分なことでもしてみろ。その髪剃ってやるからな」
「スキンヘッドの私も綺麗よ?」
「黙れ」
「お熱ね〜」
あっはっは! ジョディの軽快な笑い声が鈍い頭痛を誘う。
赤井は時計を見てから、時間があることを確認して喫煙所に急いだ。
沸騰した頭を冷やさねば、この後どうしていいのかわからなかったのだ。
■□■□■□■□■
赤井が喫煙所で煙草を燻らせていると、スモークガラスの向こう側に見知った髪色が横切った。相手もこちらに気がついたのか、煙草を吸わないのに男はドアを開けて、舌打ちでもかましそうな勢いの眼力で赤井を見る。
「そろそろ時間ですけど」
「あと十五分あるだろう」
「日本は時間にうるさいんです。さっさとしろ」
「あと五分したら行くさ」
ふ、と煙を吐いて言うと、降谷は一拍黙ってから口を開いた。
「糸川を落とすなら、まずは彼女の生きる環境を知った方がいいですよ」
ジーザス。この男の耳はいったいいくつあるんだ!
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ぱーぷる姫(プロフ) - すみません、下のコメントで気が付きました。気づくと鳥肌です!また1から読み直します! (2022年8月25日 0時) (レス) id: be661beda4 (このIDを非表示/違反報告)
もちもち - 最高でした。言葉選びとかセンスがツボに刺さりまくりました。赤井と糸川で「赤い糸」になるのも気づいた時に鳥肌止まりませんでした。とにかく最高でした。 (2021年5月5日 1時) (レス) id: b3862cde2f (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 続編お願いします(T_T) (2020年8月8日 13時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
vm - とても、すてきな言葉のセンスから見える世界観がとっても、大好きです!なかなか赤井落ちはないので、ありがとうございました! (2020年5月1日 0時) (レス) id: d0a5fbaba4 (このIDを非表示/違反報告)
syubyi - いい、、すごく良かったです、、、続きを、、後日談的な続きを、、 (2020年4月11日 14時) (レス) id: 4a176e1186 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:◎たなは◎ | 作成日時:2017年4月4日 23時