【名探偵コナン】私も「どんな関係？」と問い、ケンカ何度もしたわ。【降谷零】

こっちとしては不本意だけど、うどん的には本望 ページ3

何度か鼻をかんだ。何度かは覚えていないが、カウンターの上に置いてあったティッシュボックスを円堂が近くまで持ってきてくれたことは覚えおている。

　降谷は鼻もうどんも啜って、丼さえ啜りそうな勢いでうどんを食べ切った。
おかげで鼻はよく通るようになったし、丼とティッシュボックスは空になった。

「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」

　目の前の、空になった丼二つを円堂が下げると、降谷は気の抜けたため息をついた。
カウンターの中で後片付けをしながら、ため息の理由をきいた方がいいかと円堂が手元から顔を上げた時だった。

「風邪は人に感染すのが一番早い治し方だと、俗に言う」

　鼻をかんだからか、風邪だからか、それとも熱いものを食べたからか。

　こちらをじっと見つめる降谷の頬は少し赤いように見えた。

「安室さんが『俗に言う』なんて言い始めるなんて。これは本格的に風邪ですね」
「もう少しロマンがあってもいいと思う」
「ロマンは希少な調味料ですよ。さ、ペッパー警部が帰ってくる前にお暇した方がいいんじゃないですか」

　円堂は逃げるように手元へ視線を戻した。スポンジの泡を落として、泡まみれの手を水で濯いでいると、着ていたエプロンが突然緩まった気がした。

　ん、解けたかな、と円堂は腰で結んでいた紐を見ると

「何してるんですか」

　犯人はいつの間にか、円堂のすぐ近くにいた。

「…………」
「解きましたね？」
「…………」
「ペッパー警部に怒られますよ」
「邪魔をしないようクギを刺しておいた」
「なんてことを」
「ペッパー警部の上司だから。できるんだ」
「職権濫用では？」
「得意技だ」

　呆れた、と言わんばかりのため息が竦めた肩と一緒に、降谷が持ったエプロンの紐先へ波を伝える。円堂はいつも通りさっさと洗い物を済ませると、濡れた手を拭く前に、まだ黙ってエプロンの紐を掴み続けている降谷へゆっくり振り返った。

「降谷さん」

　一歩、降谷へと近づく円堂。青い目の中で円堂は己の姿と見つめ合った。

　降谷も一歩、エプロンの紐を手繰る。

「うっ」

　ぱっ、と降谷の目の前で何かが弾けた。思わず目を瞑った、まぶたの上に水滴が飛ぶ。
してやられた、と降谷がすぐに目を開けた時にはエプロンは足元にぱさりと落ち、エプロンの中身は降谷の背後をさっと通り過ぎてカウンターから抜け出していた。

「で、『風邪は人に感染すのが一番早い治し方』でしたっけ」

二、肉から臭みを消す方法は色々あるけれど、味を消すには会話が一番→←こっちとしては不本意だけど、うどん的には本望

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