渡英 ページ4
安定期までの期間を阿笠邸で過ごし、安定期に入ると妊娠を知る人間にだけ渡英を伝えて日本を経った。ある程度大きくなってきたお腹は、時折ぽこんと反応するようになり嬉しさを感じる。ここまで無事に育っている事への安心感と、これからの新生活に気を抜けない不安感を抱えながらイギリスへ渡った。
「やあ、君が鷹守Aだね」
長い髪を後ろで一つに括った女性が空港で迎えてくれた。すらりとした体格が美しい。日本人の顔立ちに屈託のない笑顔。鷹守は少しばかりホッとした。
「初めまして、よろしくお願いします。鷹守Aです」
「よろしく、A。葉山司だ。年も近い事だし、これから長く生活していくんだ。敬語もいらないし呼び捨てもやめよう。堅苦しいとしんどいだろ」
「まあ…………」
「別に初めて会った人だからとか、気にしなくていい。気にするのは君くらいだけど、君そんな事気にしてると今後大変だよ。君が嫌じゃなければの話だけど」
「司」
「うん、A」
勢いがあって、屈託も無い。気持ちを開いてしまえば、志保曰く「ちょっと変人」は「素晴らしい友人」となった。
■
合同捜査を行なっていた日本警察とFBIだったが、赤井とその他の数名は別件で半年近く日本から離れて米国にいた。しかし、別件が終わると赤井と数名のうちの二名だけが日本へ戻ってくる事となった。日本で行われている捜査は現在落ち着いているが、逆に言えば膠着状態であるという事。漂う雰囲気は湿っている。
赤井が警察庁に登庁し、第一声が「降谷君、鷹守は?」であった。初っ端聞いて欲しく無いところを聞かれたが、降谷は飄々とした表情のまま答えた。
「辞めました」
「辞めた? どうして」
「家庭の事情ですよ。元々鷹守のご両親はあまり体が強く無い方だって言ってましたし」
家庭の事情というところは子供関係であるため嘘かと問われるとグレーとしか言いようが無いが、鷹守の親は既に他界している。警察学校時代には既に鷹守は独りだった。
「…………そうか」
「惜しい人を失いましたよ、全く」
降谷はヒラヒラと手を振って赤井から逃げようと足早にその場を動いた。だが、声に呼び止められる。
「降谷君!」
「何です」
「鷹守は実家にいる、という事になる」
「はあ、そうなりますね」
「君、鷹守の実家がどこにあるか知ってるだろ。教えてくれ」
「はあ?」
知るかそんな事! 降谷は叫んだ。
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◎たなは◎(プロフ) - キスマイさん» 初めましてこんばんは。最後まで読んでいただいて本当にありがとうございます。感想をいただけて嬉しく思います。この嬉しさは今後の糧になります。本作は終わってしまいましたが、よろしければ他作でもお会いできることを楽しみにしております。 (2018年6月23日 22時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
キスマイ(プロフ) - はじめまして。最後までとても楽しませて頂きました。素敵な小説ありがとうございました。 (2018年6月7日 0時) (レス) id: 64045badf0 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - はなさん» お褒めのお言葉ありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです。これからも精進して行きますので、お時間許す限りお付き合いくだされば嬉しいです。 (2018年4月4日 17時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - しっかりとした文章に作者さんは頭のいい方だなと思いながら読んでいました。表現や比喩の仕方もなかなかでとても楽しかったです。ありがとうございました! (2018年4月1日 2時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - アカさん» 楽しんで頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます。続編とまではいきませんが、番外編を後日、他作のSS缶詰の方へ掲載できればと考えておりますので今しばらくお待ちください。これからもどうぞよろしくお願いします。 (2018年3月31日 20時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:◎たなは◎ | 作成日時:2018年3月22日 1時