【名探偵コナン】逃紡劇【赤井秀一】

訪問 ページ28

赤井がベンチに戻った時、そこに座っていたはずの真純の姿はどこにも無かった。何か騒ぎがあれば聞こえる距離で、真純は一人でいなくなった。ということは、見つけたのだろう。バンダナを。

　赤井は持っていた二つのコーヒーを他のベンチでベタベタくっついていたカップルに押し付け、公園の周りを駆け巡る。たった数分間、まだ遠くへは行っていないはず…………だった。

「いない！」

　どこにも見つからない。見つからないまま、しかし時間は着々と過ぎていく。もどかしさに頭が煮え、焦り、それでも時計の針は動き続ける。焦燥に指先が震え、眉間に皺を刻み、沈みゆく太陽を睨みながら人の波を掻き分ける。

　かけ続けている電話はずっと留守電。家にかけてもメアリーにかけても反応無し。赤井は焦りに焦った。今日が終われば彼女はまた自分の姿を恐れて逃げる。そう思うと、何としてでも見つけなければと余計に慌てた。



■




「家に来てくれないかな。母親もいる。でも、秀兄はいない」

　その提案に、鷹守は当然のように首を振った。葉山は面白かったのだろう、笑い転げている。

「いやいや、あのね、真純ちゃん。順序というものがあって」
「僕がママより先にAさんに会ってる時点で順序も何も無くないか？」
「そうなんだけど、でもねぇ。見つかったからにはちゃんと顔を合わせなくちゃ」
「それ思ったんだけどさ」

　ゲーム、まだ続けようよ。
予想外の提案に、へ、と間抜けな声を出す鷹守。その隣で楽しそうに両手をあげて喜ぶ葉山。

「実際、ゲームは続いてるんだ。このゲームは秀兄がAさんを見つけることで勝敗が決まる。ってことは、勝敗を分けるポイントは僕じゃない。秀兄だ。でもまだ秀兄はこの場所を見つけて無いみたいだし。ね、どう？」
「私は賛成だね！！！！ ねえお嬢さん、その案いいと思うよ。最高だ。これ案外ね、家族の挨拶っていうのは下手に気負って行くよりこうやって紹介してもらって勢いで行っちゃうの、アリだと思うね。それにその方が明るくていい！！」
「いやでも、そこまで協力してもらうのは流石に悪いよ」

　真純は笑った。不敵な笑みだった。

「Aさん、マーケットで言ったよね。僕がどっちの味方であるべきかって聞いた時、Aさん『家族に』って」
「え、あぁ。言ったね」
「僕たちもう、家族だろ？」

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