【名探偵コナン】逃紡劇【赤井秀一】

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位置にして、丁度赤井からは見えない、キッチンカーの後方。ベンチに座る真純からはよく見えるが、赤井からは車の反対側にいるため見えていないらしい。

　赤いバンダナを着けた、スレンダーな女性はナナカマドのブローチがついたバンダナを風に揺らして、黒髪の女性の隣へ佇んでいた。真純は、あ、と思う。

　赤子を抱いた、黒髪の女性。腕の中には、同じ色の髪を持つ、まだ小さな子どもの姿。

　女性がこちらに気がついた。
隣に佇む女性を見上げて、何かを話すと二人の女性がこちらを向いた。赤いバンダナを着けた方の女性が、真純を見ると顔を明るくさせて手招きしてくる。

　真純は手招きに誘われるように、ベンチからふらりと立ち上がった。引っ張られるように数歩進み、それから駆け出す。あぁ、なんて綺麗なんだ。絵画のような彼女と子どもに、少しでも近づきたいと真純は疲れ切った足を懸命に振り回した。


　
■



「あんた、やっと」

　駆けつけた真純の汗を、女性はするりと拭って微笑む。腕の中の子どもは気持ち良さそうな表情で眠っていた。

「やあ、この前ぶり。ゲームは君たちの勝ちだね。お兄さんに見つけて欲しかった所だけどね」
「あ、あぁ。ごめん。でも、その、いてもたってもいられなくて。それで、あぁ、ダメだ言葉が出てこないや。可愛い」

　呼吸をするたびにふす、ふす、と薄い唇を動かす子どもに、真純はへへへ、と笑ってしまう。

「甥っ子なんだよな、この子。僕の、甥」

　子どもを抱いた女性が顔をあげて答えた。

「そう。貴女の甥っ子。良かったら、抱いてあげて」
「い、いいのか。僕、赤ちゃん抱いた事ないんだ。大丈夫かな」
「大丈夫、私だってこの子が生まれるまで抱っこした事なかったんだから」

　両手を出して。真純は言われたままに両手を出して、柔らかな、しかしずっしりと重みのあるものを胸にする。

「柔らかいんだな。手の指も、爪もちゃんとある。すごい…………可愛い、綺麗だ。ねえ僕上手に抱っこできてる？ これで大丈夫かな」
「上手。良いお嫁さんになるわ」

　真純は温かさを腕に分けてもらい、子どもを女性に返した。

「あんた…………いや、鷹守Aさん。貴女が、秀兄のお嫁さんなんだね」
「初めまして。私が鷹守Aです。この子は見ての通り、貴女のお兄さんと私の子ども。色々と心配と不安をかけてしまった事、謝ります。そして、追いかけてくれてありがとう」

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