【名探偵コナン】逃紡劇【赤井秀一】

三日 ページ25

2日目は情報を数個手に入れるだけで終わった。しかし、法則も理解できた。

　鷹守と葉山は二人……三人一組で常に行動し、朝市で品々を見て回ってからカフェテリアで軽食を済ませ、図書館に足を運んで書物に浸り、昼食はベーカリーでパンを買っては公園で食事をする。昼過ぎに美術館や広場を散策し、観光地に少しだけ足を運ぶとマーケットに寄って帰宅。大まかにはこのような流れで一日を過ごしているらしい。

　子どもがいることを配慮し、静かな所を選んで行動しているらしく、行く先々には必ず授乳室や綺麗に整備されたトイレなどがある場所へ動いている。子ども第一の行動経路に赤井は流石だなと真純に言った。


　3日目は、2日目にわかった行動範囲を徹底的に調べてみることにした。
早朝から朝市を動き回り、多数あるカフェへ顔を出し、本の海を泳ぎ倒してパン屋を覗く。

「あー！ ほんっとに隠れるの上手いんだな！」

　正午を過ぎた公園のベンチで、真純は固まった背骨を鳴らした。歩きに歩いた足は3日目にして疲労。流石の真純もそろそろバテていた。
公園を見渡せる場所にあるベンチに座り、真純はパン屋で手に入れた焼きたてのパンを頬張る。香ばしい香りに包まれ、木漏れ日を見上げると足先の影が風に揺れる。

「このベーカリー、美味しいな。二人の後を追いかけて入った店だけど、彼女達は美味しい店を知ってるんだね」
「あぁ。Aは食事に対してもしっかりしている。子どもの事も考えているのだろう」

　赤井は真純の隣に腰を下ろす。はい、と渡されたパンを齧りながら子どもの顔を思い浮かべた。Aに似た子だろうか、それとも自分に似たか。男児か女児かも知らない赤井は、思わずため息を漏らしていた。ハッとして顔を上げると、真純が困ったように笑っている。

「どうしたんだよ、弱気だな」
「弱気にもなる。影は見えているのに、実体が見当たらない。こんなにもどかしいのは初めてだ」
「あはは、秀兄も弱るんだな。僕もね、早く会いたい。だって秀兄をこんなに戦闘不能にするんだぜ」

　へへ、と笑った真純に赤井も微笑む。
気温の高いこの時期に歩き倒したため、真純も喉が渇いているだろうと、赤井は丁度ベンチから目の前。すぐ近くにある移動販売をしているキッチンカーへ向かうため、席を立つ。食べかけのパンを真純に手渡し、コーヒーと買ってくると言うと、真澄は喜んだ。

　赤井が数人の列に並んでいる、その時。

真純は見た。赤いバンダナを。

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