家族 ページ19
赤井の母親、メアリーの住むマンションからはテムズ川が良く見える。ガラス張りの広々としたリビングに住む彼女は、その大きく切り取られた窓からテムズ川のほとりで談笑するカップルや肩車されて嬉しそうな子どもの姿を眺めながらワイングラスを傾けるのが好きらしい。赤井は空港近くにある有名な酒屋で仕入れたワインを片手に、ドアをノックする。
「秀兄!!」
飛び出して来た妹、世良真純を胸で受け止め頬に挨拶のキスをすると「変わってないな! ちょっと老けたけど!」と笑われた。そりゃ敏腕スナイパーも年くらいは取らねばやってなれない。四十路を目の前に、赤井は早く鷹守に会いたいとため息をついた。
「帰って来て早々ため息とはいい度胸だな」
「…………」
睨み上げると、そこにはブロンドの美しい女性が立っている。相応の年に見えないこの女、メアリーは赤井の母親である。証拠など無い。あるとすれば顔面で十分である。
「ただいま」
「おかえり。どうだ、日本は。結婚くらいしたんだろうな」
「未来の嫁を今捕まえるために奔走していたところだ」
「阿呆かお前。逃げられてどうする」
鼻で笑ったメアリーは真純に「真純、ボーイフレンドができたら奥手では駄目だ。押せ。押しに押せ」と何故か頷きながら言っている。真純は慣れているようで適当に相槌を打っては適当に流している。彼女も成長したのだ。色々と。
数年見ないだけで、随分と身長が伸びた。髪の短さは相変わらずだが、母親譲りのすらりとした体型は美しい。曲線には欠けるが、その分活発さが溌剌としていて清々しい。凛とした視線は人を惹きつける。
メアリーは赤井の持って来たワインを見て「これにはチーズだな」と言うと今し方到着したばかりの赤井に「つまみを買ってこい」と言いつけた。
「真純、ついていくといい。なんでも買ってくれるぞ」
「なんでもは無理だ」
「でも秀兄移動で疲れてるんじゃないのか? おつまみのチーズくらいなら僕が買ってくるけど」
可愛い妹の小さな気遣いに、赤井は首を振った。久しく会ったのだ。しかも期間は二週間もない。存分に付き合ってやりたかった。
「機内で寝て来た。疲れてはいない。行くぞ、真純。案内はお前に任せる」
「やった!! 行ってくるね、ママ!」
「気をつけるんだぞ」
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◎たなは◎(プロフ) - キスマイさん» 初めましてこんばんは。最後まで読んでいただいて本当にありがとうございます。感想をいただけて嬉しく思います。この嬉しさは今後の糧になります。本作は終わってしまいましたが、よろしければ他作でもお会いできることを楽しみにしております。 (2018年6月23日 22時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
キスマイ(プロフ) - はじめまして。最後までとても楽しませて頂きました。素敵な小説ありがとうございました。 (2018年6月7日 0時) (レス) id: 64045badf0 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - はなさん» お褒めのお言葉ありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです。これからも精進して行きますので、お時間許す限りお付き合いくだされば嬉しいです。 (2018年4月4日 17時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - しっかりとした文章に作者さんは頭のいい方だなと思いながら読んでいました。表現や比喩の仕方もなかなかでとても楽しかったです。ありがとうございました! (2018年4月1日 2時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - アカさん» 楽しんで頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます。続編とまではいきませんが、番外編を後日、他作のSS缶詰の方へ掲載できればと考えておりますので今しばらくお待ちください。これからもどうぞよろしくお願いします。 (2018年3月31日 20時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:◎たなは◎ | 作成日時:2018年3月22日 1時