葉山 ページ17
胸ポケットが震えてすぐ、消音機能が解除されたらしい。胸ポケっとから声が聞こえた。しかし、その声は鷹守のものではなく
『赤井捜査官及び降谷警視に通達する。今すぐその場に直立し口を閉じろ』
降谷のスマートフォンは現在通話にスピーカー機能を用いていない。しかしその張りのある大声は、力強くドアを叩いていた、壁一枚向こうの赤井にも聞こえるほどよく通る声だった。降谷にはその声が葉山のものだと理解できるまで、いつもより三倍以上もの時間を要した。
電話の向こう側は、周囲が静かになった事を確認できると、『よし』という言葉を境にいつも通りの戯けた声に戻った。
『もー、赤ちゃん泣いちゃうじゃーん。ダメだよこっちだって聞いてて怖くなっちゃったんだからー』
間延びして気の抜ける声が室内に響く。
『ドア壊れちゃうからさ、まあ鍵は開けなよ。志保ちゃん困っちゃうしー。ねーえ？』
降谷は時間にして一秒、脳内では約五分悩んでドアの鍵を開けた。そっとドアから離れると、拍子抜けた顔の赤井が立っている。視線が合って一秒、降谷は声の持ち主を示すため胸ポケットに端末が入っている事を見せるため、指先で端末を摘むと目の前に引き上げた。
赤井と降谷の間で吊り上げられた端末が、場の空気に合わない間抜けた声で喋り出す。
『ほらー、やっぱさー喧嘩は良くないじゃん？ この世はラブアンドピースじゃん？ ラブの方は達成できてるし、あとはピースでしょ』
「お前は誰だ。何故俺のことを知っている」
『あ、私？ 私は葉山司って人間です。科学者みたいな医者やってます。後は色々秘密です』
「そこに、鷹守Aがいるのか」
『いるよー。でも場所までは言えないかな。パパの試練はここからだもんねー。愛しい女とその子どもを探す。素晴らしいじゃーん』
「子どもが、いるのか」
『いるよー。さっきまで起きてたんだけど、今寝ちゃった』
降谷は思う。よくこの状況で寝れたものだな。流石は赤井と鷹守の子ども……。
困惑する赤井そっちのけに、葉山は笑いながら続けた。
『赤井秀一。君は知らないうちにパパになりました。もしかしたらママは君の愛した人かもしれない。で、今赤井秀一が愛した女は妊娠して国内にいない、と。どれだけ探しても見つからない。でもね、赤井秀一』
『いるんだよ、ここに。赤子抱えた女が。子どもは赤井秀一そっくりだ。可愛いぞ。見つけに来いよ。大丈夫、地球の三割のうちの何処かにいるから』
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◎たなは◎(プロフ) - キスマイさん» 初めましてこんばんは。最後まで読んでいただいて本当にありがとうございます。感想をいただけて嬉しく思います。この嬉しさは今後の糧になります。本作は終わってしまいましたが、よろしければ他作でもお会いできることを楽しみにしております。 (2018年6月23日 22時) (
レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
キスマイ(プロフ) - はじめまして。最後までとても楽しませて頂きました。素敵な小説ありがとうございました。 (2018年6月7日 0時) (レス) id: 64045badf0 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - はなさん» お褒めのお言葉ありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです。これからも精進して行きますので、お時間許す限りお付き合いくだされば嬉しいです。 (2018年4月4日 17時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - しっかりとした文章に作者さんは頭のいい方だなと思いながら読んでいました。表現や比喩の仕方もなかなかでとても楽しかったです。ありがとうございました！ (2018年4月1日 2時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - アカさん» 楽しんで頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます。続編とまではいきませんが、番外編を後日、他作のSS缶詰の方へ掲載できればと考えておりますので今しばらくお待ちください。これからもどうぞよろしくお願いします。 (2018年3月31日 20時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：◎たなは◎
| 作成日時：2018年3月22日 1時
