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避難 ページ15

降谷は玄関へ駆け込み、即座に自分と秋本の靴を回収する。宮野の「上に」という声で秋本は端末を、降谷は靴を手に一番奥の部屋へ駆け込んだ。内側から施錠をしたところで、家のチャイムが遠くで鳴り響いた。

 FaceTimeは繋がったままだが、鷹守側の画面が暗転している。状況は察知しているらしい鷹守は、消音機能で存在を消していた。

「鷹守」

 降谷が呼びかけると声だけが返ってくる。

『状況は』
「車の音からして赤井だ。秋本警視正と二階西奥の部屋に避難。端末は手元にある」
『通話に切り替える。消音にしておくから、スマホをジャケットの胸ポケットに』
「わかった。電話はこちらからかける」
『了解』

 下階で阿笠の声に混じって赤井の声が聞こえた。二人は目配せして通信が切れた端末の電源を切って机の裏側に隠し、降谷のスマホから鷹守へ繋ぐ。二度目のコール音が聞こえないことを確認して降谷は小声で「繋いだぞ」と呼びかけると向こう側から『予定通りに』という言葉の後、一切の音が消えた。

 降谷が胸ポケットへスマホを入れた所で、足音が階段を昇って来る。

 降谷が鷹守とやり取りをしていた時、秋本は小さな窓を音も無く開け脱出経路を考えていた。部屋にあるものはベッドにランプ、小さな机と本棚、そこに埋め尽くされた本。

 秋本は雨樋を発見すると降谷に目配せし、靴を履く。ポケットに入っていた革の手袋をつけ、窓から雨樋に飛び移ると器用に二階から一階の庭まで飛び降りる。降谷もそれに続こうと窓枠に手をかけた時だった。

 鳴り響く、ドアを叩く音。据わった声。ドアの隙間から漏れる殺気に近い苛立ち。

全身の肌が、培って来た脳が、警報を鳴らす。

「いるんだろう、降谷君!! 開けろ!!」

 ドアが壊れるのではと危惧する程の声に、心臓の端末が小さく震えた。

逃場→←電話



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◎たなは◎(プロフ) - キスマイさん» 初めましてこんばんは。最後まで読んでいただいて本当にありがとうございます。感想をいただけて嬉しく思います。この嬉しさは今後の糧になります。本作は終わってしまいましたが、よろしければ他作でもお会いできることを楽しみにしております。 (2018年6月23日 22時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
キスマイ(プロフ) - はじめまして。最後までとても楽しませて頂きました。素敵な小説ありがとうございました。 (2018年6月7日 0時) (レス) id: 64045badf0 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - はなさん» お褒めのお言葉ありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです。これからも精進して行きますので、お時間許す限りお付き合いくだされば嬉しいです。 (2018年4月4日 17時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - しっかりとした文章に作者さんは頭のいい方だなと思いながら読んでいました。表現や比喩の仕方もなかなかでとても楽しかったです。ありがとうございました! (2018年4月1日 2時) (レス) id: 0b253d056d (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - アカさん» 楽しんで頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます。続編とまではいきませんが、番外編を後日、他作のSS缶詰の方へ掲載できればと考えておりますので今しばらくお待ちください。これからもどうぞよろしくお願いします。 (2018年3月31日 20時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:◎たなは◎ | 作成日時:2018年3月22日 1時

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