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ココアを飲み終わった少年をビショップがスタッフルームの奥にあるのであろうシャワー室に連れて行くと、室内は静けさを取り戻した。カウンターの中でマグカップを洗う若い女性のたてる音だけが、その部屋に存在していた。
「すみません」
降谷が静けさに身を置いて、やっと本の内容を目で追い始めたあたりで声は唐突にやってきた。静かな声であった。
降谷が顔をあげると、若い女性は手作業を進めながらも目線はこちらへ投げかけてくる。
「何が、ですか」
「いえ、お気を使わせてしまったようで」
「あぁ、いえ。お気になさらず」
若い女性は「ありがとうございます」と、それもまた静かに応えてから、手作業の手をふと止めて言った。
「あの子には諸事情があって、こうしてたまにここへやって来るのです」
「諸事情」
「家庭的な話しなので、あまり詳しくお話はできません。できれば、今あったことはご内密に」
女性は水作業で濡れていた手をタオルで拭いたあと、降谷に向き直る。
「それと、安室さん」
女性の目が、真剣な眼差しになった。降谷は直感する。この話は、降谷の懐に預かった、例の手紙の話だと。そして彼女は、この件を知っているのだろう。
だが、話が続くことは無かった。
丁度女性が次に口を開こうとした瞬間、スタッフルームのドアが開いたのだった。
出てきたビショップの表情は曇っていた。
女性は、開きかけた口でビショップに尋ねる。どうかしたの？ と。
「まずいよ」
「何が」
「痣が増えてる。それも、見えない場所に」
女性の目が見張られる。不安な色に染まったその瞳を見たビショップが、困ったように微笑んだ。
「大丈夫、玲司は生きられる子だよ」
ビショップがカウンタースツールに腰掛けると、女性は珈琲をビショップの前に置いた。先程と変わらず、それは柔らかな湯気がゆらめいている。
ビショップはそれを口に運びながら、湯気の向こうで呟いた。
「まだ、泣けるからね」
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tunatoromeji(プロフ) - 作者さんの紡ぐ言葉がとても好きです、だから他の作品も好きでした！この作品は本屋さんの雰囲気とかマスターとかチェスとさ私の好きな要素満載なので更新を楽しみに待ってます！応援してます！！ (2017年12月27日 14時) (
レス) id: 21a405ecbb (このIDを非表示/違反報告)
くうらぎ(プロフ) - 確かに降谷さんって結婚したくないとか思ってそうなタイプですよね。妹さんがどんな人なのか気になります。今後の展開が待ち遠しいです。 (2017年6月1日 14時) (レス) id: 3cf57895d6 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - 降谷はこんな人じゃないしー (2017年5月31日 23時) (レス) id: b2dbe2074b (このIDを非表示/違反報告)
りん - このあとどうなるか知りたい続きが楽しみにしてます頑張ってください (2017年5月31日 22時) (レス) id: aa9084d7b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：◎たなは◎
| 作成日時：2017年5月31日 18時
