#知らなくて ページ10
背中で拒絶してたさかたんの姿が見えなくなってから、私はセンラさんを居酒屋に引き摺って行って、事の顛末を白状させた。
セ「なんで俺がこんな面倒な事を……」
「言わないから、言いなさいよ」
セ「……ったく、お前らめんどい……」
私に連絡先を渡してきた、他店の社員さんはやっぱりさかたんの彼女で。
お店のオープニングで応援に来ていた時にさかたんと知り合って、彼女の方から猛烈にアタックしたらしい。
私も何度か一緒になった彼女。
凛としてて、自分に自信があるっていうのも伝わってくるような感じの人で。
同じ女性としても、そういう姿勢は羨ましいな……なんて思ったりもしたものだったけれど。
それは、私が彼女の『社員』としての側面しか見ていなかったからみたいで。
セ「なんかさ、疲れたんだって……んで、別れ話したら、他にも相手がいるんだろうっつって」
彼女は、子供の頃から勝ち気で、成績も運動神経も良かったからか、あまり人生で挫折を経験していないタイプらしく。
自分の思い通りにならないさかたんに、イライラするようになって、最近では自分勝手な意見を押し付けるようになったらしい……と、センラさんは俯いた。
そうしている間に、彼女の行動はエスカレートするようになって、連絡先を交換していたウチの店のコ達や、社員さんに探りを入れたり。
自分のシフトに合わせないさかたんに酷い言葉を投げつけたり……挙句の果てに、ひとり暮らししているさかたんの部屋の合鍵を勝手に作って、勝手に入ってるようになって。
きっと、私に言える範囲でしか話してないのだろう……まるで自分の事を話してるみたいに悔しそうな顔をしてる様子から、センラさんはもっと詳しい話を聞いてるみたいで。
セ「んで、話が通じないっつって、坂田は自分の部屋から逃げたんだよ……
最近はみんなの家、泊まり歩いてる」
そんな事、知らない。
驚いてる気持ちが顔に出ちゃってるのか……センラさんは私の顔を見ると、居心地悪そうに自分の後頭部をワシャワシャと掻いた。
セ「流石にオンナから逃げてんのに、違うオンナんちに泊まりに行くワケないやん……」
「そりゃそうだけど……」
セ「言わなかったのは悪かったな……それも、理由があってさ……」
バツが悪そうなセンラさんは、私の様子を窺いながら、話を続けた。
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