６６ 体調、再び。 ページ31
「あーるじさんっ！俺達の"驚き"、これで終わったと思わないでください！」
「お？お、おう？」
途端に、鯰尾が会話に介入してきた。その突然さは流石の海翔も吃驚し、よく判らない反応を返してしまった。
鯰尾がにこにこしながら、カウントダウンを始める。
「５、４、３、２、１……０！」
その瞬間、大広間の灯りが消えた。海翔が吃驚して周囲を見回している最中、鯰尾はずっとにこにこ笑んでいる。やがて灯りがつくと、海翔はその光景に、否、状況に目を丸くした。
刀剣達が組体操の様なものをして、その上部に居る前田と秋田と小夜が、『誕生日御目出度う、これからも宜しく！』と書かれた紙を広げた。丁寧な字で、刀剣達のあたたかみが伝わってくる。堪らず海翔は、満面の笑みを浮かべた。「これは…！正に驚きだな！」
然し。
「うっ………」
突如、海翔が胸を抑え始めた。
「あ、主……？」刀剣達は、次々と海翔へ近付いて行く。中にはあまりに突然の海翔の異変に、顔を青ざめる刀剣もいた。「も、もしかして、今のが何か悪かったか…？」自分達に負があったのではないか、と心配し始める刀剣達に、真っ先に海翔の体調を診た薬研が言った。「否、それは違うぜ」
「薬研……？」
「突然の発作みたいなもんだ。持病があるのかは知らないが、これは少なくとも、今のが原因で起こった訳じゃないぜ」
「…よ、良かったぁ……」
その後、取り敢えず安静にという事で、海翔は審神者部屋へと運ばれた。
誕生日というめでたい日に起こった出来事という事で、一変静まり返った大広間だが、空気を変える様に和泉守が言った。
「起きた事は仕方無え。主の無事を祈るしかないだろ！」
「！…そうだね、和泉守の言う通りだ」
「流石、兼さんは良い事しか言わないね！」
空気が変わった刀剣達は、早速会場の片付けを始めた。安定と清光は海翔の事が心配になり、やる事を終えたら直ぐに審神者部屋へと向かった。
審神者部屋では、薬研と乱が付きっきりで看病していた。海翔は荒い息を立てながら、何度も苦しそうに表情を歪ませている。「…薬研、主は如何？」不安そうに、安定は聞いた。
「安心してくれ大和守。大将はつい先刻よりは落ち着いてきた。俺が研究して調合した薬が効いたのかもしれんな」
「本当に先刻酷かったんだよ。嘔吐しそうなくらい咳をたくさんしていて…」
「あるじさんが死んじゃったら、ボク…！」徐々に乱は、涙を零した。
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