呪われた刀剣は、愛されたかったようで。【刀剣乱舞】 (ページ16)

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５６　主様の最期　語り部：淤御国ページ16

主様は、村の人達に取り押さえられました。

「待て！待て！止めろ！もうこの地を血で濡らしたくは無いのだ…！」

主様は叫びました。お構い無しに戦いは続きます。本来なら、それが当然なのです。村の人達は言いました。主様を睨みながら言いました。

"我々が戦に物申す権利など無い。貴様は大人しくしておれ。忌み子が口を出すで無い。"

やがて戦は終わりました。鉄砲や炎の矢が飛び交った後の戦場は地獄絵図で、荒れ果てていました。主様はその姿に泣きながら、嗚咽を混じらせていました。

主様は現代で言う"鬱"になりました。僕を作っても、自分の弱さを変えられなかったからです。そして、更に悪化する出来事が起きます。

主様は翌日目を覚ました時、周囲を村人達に囲まれていました。主様の混乱している様子を見て、村人達は何も反応せず、主様が寝床として使っていた馬小屋を燃やし始めました。

何が起こっているのか判りません。主様は必死で問いました。何故こんな事をするのか。何故？何故？

主様に、村人達は告げました。

「それさえ判ぬのなら、矢張りお前は忌み子だ」

主様は怒りました。怒りが主様の生存本能を研ぎ澄ましました。主様は僕を手に取り、僕の柄に火を引火させました。僕の柄は木製だったのです。

主様は走りました。そして、村人達に追いかけられながら、村中の燃える物にどんどん火を引火させていきました。主様は、もうこの村等どうでも良いと感じてしまったのでしょう。

やがて、村は村人と動物と引火物を巻き込んで滅びました。村に偶然訪れた役人は、そこで僕を見つけました。

僕は未だ焼けてなかったのです。不思議と。刃だけは何故か。柄は完全に消失していたというのに。

それが主様の言っていた、［幸央殊］様のお力かは判りません。然し武士らは、僕を貴重な刀と思い、君主に献上する事としたのです。その際、近くで一輪だけ残っていた匂蕃茉莉と、一振りだけ生き残っていた事から、［茉莉守淤御国］と呼ばれました。

それから僕は、武士らが仕える君主の下に献上されました。ですが、

僕の呪いは、本領をここから発揮するのでした。