摂氏32度 ページ32
組み敷かれても尚、Aは何も言わない。
首に肩に、見える範囲でどんどん痣をつけていく。
｢ごめんね…。｣
｢ちゃうやん、そんな言葉聞きたくない。｣
｢うん、分かってるよ。｣
｢分かっとらんやろが！｣
下からするりと首元に腕が回される。
皮膚越しに伝わる体温は熱いか冷たいかも分からず、このままどちらとも分からなくなるぐらい溶けてしまいたい。
｢A。｣
｢うん、ここに居るよ。｣
ようやく涙を零し始めたので、掬うように涙を拾い上げて布団に払ってやった。
｢言うの遅いやん。なんで、なんで今更言うん？｣
｢それは…。｣
｢このクソメンヘラ女が。｣
｢そうだね、わたしよりもっといい人いっぱい居るから。だから、もう今夜で最後にしよう。｣
泣きながら言われてもなんの説得力もなく、首を横に振るがAは受け入れてくれない。
二度と俺と一緒に居れないことを想像するだけで目眩がしそうだ。
｢もう喋んな。｣
うわ言のように馬鹿なことしか言わないので、口を塞ぐ。Aは涙を流しながらも、目が融けている。
このまま抱いたとしても、数年後にはAは忘れてしまう。そんなの嫌だ、忘れられなくないし、忘れさせたくない。
いっそのこと、手酷く抱いてやろうか。
｢ねぇ、うつ…。｣
｢あ？｣
口を解放してやると、暫く閉じかけていた瞳が見える。映る瞳には俺の顔がやけに酷く見えた。
｢わたしのこと好き？｣
｢聞かんでも分かるやろ。｣
｢好き？｣
今答えたら、Aは許嫁とやらに行かないのか。いや、答えたとしてもコイツは行くだろう。
分かりきっている結果が見えているのと、Aの意思を尊重したいのがあって、答えられない。
｢そっか、分かったよ…。｣
何も言わない俺に痺れを切らしたのか首元に回された腕を押され、吐息が絡み合うぐらいの距離まで顔を近付けられた。
｢もういい。今日は優しくしないで。｣
｢後悔すんなよ？｣
｢何でもいい、早くしよ。｣
イラついたように吐き捨てられ、自暴自棄な態度に俺も反発するように答える。
腹が立ってるのはこっちだということも分かっていないのだろう。
Aの要望に応えてやろう。
きっと、最後のワガママなのだから。
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まりも(プロフ) - はぁな。さん» 星の数ほど作品がある中、ここまでたどり着きありがとうございます！励みになりました！お時間のある時に別作品もお目通し頂ければ嬉しいです♬︎♡ (2021年11月13日 17時) (
レス) id: ce69082adc (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - あ、あの！この作品今日見つけて、一気に読んでたんですけど、ものすっごく夢主ちゃん好みです！！最後の幸せそうな2人が好きすぎてもう…他の作品も読ませてもらいますね！ (2021年11月12日 16時) (レス) @page37 id: 523b12b408 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - ゆうなさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！テンポよく進めたくて頑張りました笑 夢主は天真爛漫に近いイメージでやっていたので、好みと仰っていただき恐縮です！また、お暇の際他作品もご覧下さい♬︎ (2021年10月20日 20時) (レス) id: ce69082adc (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - めっっっっっちゃ！いい話でした！！やっぱり最後の鬱がホームで想いを伝えるところで涙がぽたりと、凄く読みやすくて尚且つ夢主の性格や言動なんかもすごい好みでした！ほかのさくひんもよみます！！！！ (2021年10月20日 10時) (レス) @page37 id: 53cc08d6c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まりも | 作成日時：2021年10月4日 20時
